out-focus

音楽について

FKA twigs 『LP1』に至るまでと期待値の高さ

f:id:junji0412:20140807152625j:plain

失礼を承知で言えば、彼女は突然変異体の爬虫類のようなものだ。いや、本当に失礼な言い回しなんだけど、その容姿と音楽性にはどこか異星人のような、地球上では触れることのできない領域に足を踏み入れてしまった感覚がある。

 

FKA twigs(FKAツイッグス)ことTahliah Barnett(ターリア・バーネット)はイングランド南西部グロスタシャーにあるチェルトナム出身の26歳。冒頭で指摘したその異形で美形な容姿は、彼女の中にジャマイカ系とスペイン系の遺伝子が混ざっているからである。10代からダンサーとして活躍していた彼女。その頃の映像はJessie J「Price Tag ft. B.o.B」のMVで見ることができる。

 
"Twigs"=小枝(指などの関節をポキポキ鳴らすのがクセだったからだとか)と付けられたネーミングも今では彼女のコンプレックスを掲げた音楽へと向けられた決意表明だったのかもしれない。そして突如2年前に発表された『EP1』といい、活動初期からすでにブラックホールのように強力な磁力を纏い、その高い音楽センスに多くの早耳リスナーが飲みこまれていったのだ。
 
『EP1』は作詞、作曲、プロデュースに至るまで全て自身で手掛けた4曲入りのEP。この時すでに自分自身の長所と短所を明確に理解し、その容姿と声が最大限活かされるプロダクションが施されている。ここ日本でもセルフプロデュース能力の優劣によりメジャー/インディー関係なく、インターネットを介して自らの強みで勝負できる時代だ。FKAにおいてはそういったセルフプロデュースはしていてもセルフプロモーションは積極的に行って来なかった点において、やはり特質な星の下に生まれたと言わざるを得ないだろう。

Dir:Grace Ladoja

 

2013年にはYoung Turks(SBTRKT、The xx、Samphaなど)に所属し、Kanye West『Yeezus』にも参加したことで注目されたArcaプロデュースの下『EP2』を発表。金属質でドメスティックなArcaのインダトリアルサウンドを軸に、FKAの特長あるハスキー&ウェットヴォイスが異質で難解なサウンドスケープをポップなモノにしているのも、奇妙であり心地良い絶頂をリスナーに与えてくれる。 

Yeezus

Yeezus

 

この『EP2』は米Pitchforkにて8.0点を獲得。(FKA twigs 『EP2』:Pitchfork) これによりランキングチャートを追いかけるポピュラー層にもその存在が認知された。もちろんここ日本でもArcaの存在同様、より多くの音楽ファンの耳に届いたことだろう。

比較的マイペースな活動と常に秘密主義なイメージを持たざるを得ないFKAの音楽ワーク。それも今年に入り急激にそのペースを早め、彼女自身の表現におけるキャパシティを拡大させることになる。

 

それを印象付けるのが今年2月にリリースされたInc.(インク)とのコラボシングル「FKA x inc.」。

ロス出身の兄Andrew Aged(Vo./Gt.)と弟Daniel Aged(Ba.)からなるR&BデュオInc.とのコラボはそれまでのFKAのイメージと合わせ、シンブルなR&Bトラゥクとサウンドトラッキングな一面を見せてくれた楽曲だった。モノクロームなMV同様、退廃的でありつつも優美なパフュームを香らせている。元々Aged兄弟はBeckやMarilyn Monroeなどのレコーディングに参加してきた経歴を持つミュージッシャンだけに、このコラボレーションには彼らと同じく浮上途中であったFKAをフックアップする意味合いもあったのかもしれない。

FKA x inc.

FKA x inc.

  • FKA x inc.
  • Electronic
  • ¥250

 

No World

No World

 

 

大雑把ではあるがここまでがFKA twigsのアルバムまでの歩みだ。こう見るとLordeのようなシンデレラストーリーではなく、どちらかといえばSky Ferreiraのように経歴と経験値を下積みも込めて兼ね揃えたシンガーなんだと分かる。もちろん唯一無二の存在感と見出されるべきスター性も当然のごとく持っていたからこそのこと。米ビルボードBBCにおける2014のブレイクアーティストに選出されてはいるが、正直メディアにおける前口上は必要のないほどすでに洗礼されているのが、今現在のFKA twigsという存在だ。

 

そして満を持してリリースされた1stアルバム『LP1』は、今までで最も現状のミュージックシーンに近づいたアルバムになっている。引き続きArcaとFKAが共同プロデュースを務めるトラックもあるが、今作ではPaul Epworth(Adele、Paul McCartneyU2など)、Dev Hynes(a.k.a Blood Orange)、Emile Haynie(Lana Del Rey、Bruno Marsなど)、SamphaInc.といったプロデューサー&ゲストが参加している点がなによりシーンとの接近に起因している。


アブストラクトとコンクリートの間を行き来するかのようなサウンドテクスチャーは、それぞれのプロデューサーによるトリップなプロダクションと、FKAの耳元で囁かれているようにリスナーとの距離感を無にするヴォーカルがあってこその表現領域だ。R&Bやトリップ・ポップをベースに置きながらも、ジャンルに束縛されることでその外側を想起させる中毒性に、とにかく目も耳も離せないこと必須だ。

LP1

LP1

 

 日本盤特典には今や入手困難な『EP1』の楽曲が付属しているので、是非そちらを手に取ってほしい。個人的にはエレクトロビーツなエッセンスもあるこのアルバムをレコードを回して聴いてみたいものです。(ということでアナログ盤も購入予定です 笑)

f:id:junji0412:20140813174812j:plain

 

あとは来日のタイミングを期待したいところ。Arcaは今年来日済みであり、Lordeなどの単独公演も開催されたのも含めて、来年の初頭あたりに熱望したい。モデル、ダンサー、フイルムディレクターなどその非凡な才能を未だ研磨し続けているだけに、遠く離れた極東日本でも人気に火が付き、是非そのパフォーマンスを眼に焼き付けたいものだ。

 

最後に今年4月にNYで行われたライヴの模様を。禍々しさとセクシャリティーが内在したダンスパフォーマンスはフルで見たらさぞかし圧倒されるだろうな...