out-focus

音楽について

Secret Songs『shh#ffb6c1』~近未来のネットミュージックに向けたボトルメール

 f:id:junji0412:20140924160355p:plain

Ryan Hemsworthが主宰している「Secret Songs」から『shh#ffb6c1』なるコンピレーションがフリー公開されています。→特設サイト

DL直リンク

GFOTY, et aliae, Late Ride, Kero Kero Bonito, Qrion, chindamo, Swick & Lewis Cancut, Kumisolo, Cuushe, Ellie Herringといった10の女性アーティスト(一部男性)が未発表曲を提供しているコンピレーションはまさにネクストカミングな内容。DTMが音楽制作をパーソナルでよりポピュラーなモノへとシフトさせ、SoundCloudTwitterといったインターネット上でのプラットフォームが浸透した今現在、音楽シーンにおいて「いかにリスナーに聞かせられるか?」という点で知名度は大きく変わっていく。こういうコンピレーションがそれら未開拓な音楽体験のキュレーションポイントになることで、クリエイターもリスナーもより豊かなミュージックライフを実感できるだろうと、個人的には信じています。

変化を期待するだけでは自分自身のためにもならないので、ここはこのコンピレーションを中心に掘り下げてみましょう。

 

まずは「Secret Songs」を主宰するRyan Hemsworthから。

 

ハリファックス(カナダ)出身の若き音楽プロデューサーは今までにFrank Ocean, Grimes, Lana Del Rey, Lorde, Rhyeなどのリミックスワークを手掛けながら、Main Attrakionz, Shady Blaze, Lizなどのラッパーへトラック提供しています。

 

また、LAシーンのプロデューサー集団WEDIDITの一員としてShlohmo, RL Grimeと肩を並べるなど、ヒップホップアーティストとのコラボレーションにも定評がある器用な存在でもあります。去年10月にはソロ名義で初のフルアルバム『Guilt Trips』をリリース。Sinead Harnett, Baths, Tinashe, Kittyといった面々とコラボレートしたアルバムはヒップホップトラックを軸にチル&B、ブレイクビーツなどを自由奔放にアウトプットしたサウンドメイクが多くのリスナーに受け入れられました。

その他にも数枚のEP作品を発表していますが、その最新作である『Stilll Awake』ではベッドルームミュージックを感じさせるラフなエレクトロサウンドとドリーム・ポップ、シンセポップな顔も見ることができます。

シーンや人がカテゴライズされ、地域と活動経歴によって分布図が描かれるヒップな一面と、未だ自室からインターネットを通じて世界とコメクトする夢を少年性が今回の『shh#ffb6c1』のチョイスにも繋がっているんじゃないかな?

 

Guilt Trips

Guilt Trips

 

Ryan Hemsworthインタビュー - 写真 | Red Bull 音楽・カルチャー

 

 次に参加アーティストについて。

 01. GFOTY (@GFOTY) | Twitter

ロンドンのネットレーベル"PC Music"に所属するシンガー兼トラックメイカー。Grimes同様のフィメールクリエイターであり、エフェクトを多用したエレクトロサウンドとキメの多いキュートなライミングが特徴的。提供した「My Song」も構成がハチャメチャで、出だしから脳内処理に戸惑わせるようなトラックが何ともギャルっぽい。

 

02. et aliae (@et_aliae) | Twitter

MAGIC YUME Recordsのコンピで名前を見かけていたけど、やはりトラップ感あるダウンテンポがクセになる。ミニマルテクノ、ドリームポップなどの要素もあり。ロンドン在住でリミックスやDJなども行っている存在だけに今の内に認知していくべきでは!?(SoundCloud

03. Late Ride (@LateRide1) | Twitter

Elisa & Alex Floridoの姉弟からなるユニット。音源や情報も少なく、2013年半ばから活動を始めたアーティストらしい。浮遊感のあるエレクトロサウンドと力強いキックにはどことなく中田ヤスタカやSeiho, tofubeatsの香りもする。日本との繋がりは不明だが、インターネットを通じて本能的にそれらポップスの作り方を身に付けてきたであろうイマドキな存在だと思う。

 

 04. Kero Kero Bonito

Sarah, Gus, Jamieからなる女1男2の変則ポップトリオ。もう名前からしてネタなんだけど、それを裏切らないチープかつ中毒性の高い楽曲が彼女たちの武器でもある。Sarah Bonitoの日本語/英語が交互に入れ替わる歌が今回の提供曲でも抜群に浮いてる。音源もいいがここでは貴重なライブ映像を。「ケロッケロッ!」ってレスポンスは新鮮だなぁ...笑



05. Qrion (@_Qrion_) | Twitter

札幌在住の19歳。札幌を中心に音楽/アートクリエイターを多数抱えるレーベル「SenSe」 に所属している彼女の音は寒冷地っぽい質感が少なく、IDMアンビエントに触れそうで触れない隙間を突く空間デザイン的なアプローチも面白い。彼女の音雲やBCでの音源を聴く限り、4つ打ちやチル系の音もあったりしてホントにボーダレスな感性を持っているだと関心してしまう。

 06. chindamo (@hi__chindamo) | Twitter

カンザス州ローレンス出身のトラックメイカーはなんと若干15歳。多作家らしくネットを通じて多数のコンピやEPに参加しているようです。タイトル含めジャパニーズカルチャーへの偏愛を掲げ、メランコリーなシンセポップからアバンギャルドブレイクビーツまで手掛ける音色は多種多様。提供した「Pachirisu」ではアジアンな音階とグロッケンソフトがコンピの流れを落ち着かせるような役割も担っている。

 07. Swick & Lewis Cancut

メルボルンのトラックメイカー/プロデューサーSwickと同じくメルボルンLewis Cancutによるユニット。そこにアデレードのフィメールラッパーTkay Maidzaがヴォーカル参加した「Wishes」は、3人の得意とするジャンルというよりはこのコンピレーション寄りな手軽さとスタイリッシュなコンセプトに沿ったサウンドに仕上げている。この3人のアップビートなナンバー「Arm Up」も聴いて損ナシ。

 

08. Kumisolo

日本生まれパリ在住のkumi okamotoによるソロプロジェクト。80年代のハウス、もしくはフレンチポップをベースに、バンドやDTMなど活動スタイルも様々で、それら言語やお国柄に縛られない経歴が今回の「Kung Fu Boy」、そして彼女の代表作『My Love For You Is A Cheap Pop Song』でもよく分かる。Kero Kero Bonito同様、分別することすら戸惑うその明確な行動力と戦略は、本当にネットミュージックにおける「やったモン勝ち」を体現してますよね。憧れる生き方。

09. Cuushe

東京発で世界もその動向に注目しているレコードレーベル"flau"の最注目アーティストであるCuushe。上のKumisoloも同じくflauからリリースしているが、Cuusheがちょうど一年前にリリースした『Butterfly Case』は年間ベストに入ってもおかしくないほど繊細なサウンドテクスチャーによって構築されたヒーリングアルバムだった。そんな彼女の新曲「Do You Feel Me」はフレキシブルなエレクトロトラックを基盤としながらドリーミーなヴォーカルとシンセエフェクトが魅惑的に絡み合うダンスポップナンバー。9/29にイタリアのプロデューサーPopulousがリリースするアルバム『Night Safari』にもゲスト参加しているのでこちらもチェックを。

10. Ellie Herring (@EllieHerring) | Twitter

レキシントン(アメリカ・ケンタッキー州)で活動するEllie Herrringの提供曲「Mickie」を聴けばその可憐な容姿とは少し異質な音楽センスに興味を抱くに違いない。ガーリーな装いに内向的なサウンドコラージュ。Cornelius高橋幸宏などのミニマルテクノを微かに背負い込みながら、レイヤーミュージックの基本に忠実な面もある。スローテンポな楽曲の多くを彼女の音雲などで落とすことが可能だ。個人的にはこの18+のリミックスが好き。

 

 

 

紹介してみて、どのアーティストにも共通して言えることがあることに気付きました。

それは皆、日本の音楽、ゲーム、アニメ、風習などに何かしらシンパシーを感じ、それらからのインスピレーションとオマージュを音楽に落とし込んでいるということ。もちろんet aliaeやCuusheのように日本から世界へとインターネットを通じて新たなカルチャーアイコンとして羽ばたく人が今後増えていくだろうし、Ryan Hemsworthはそんな近未来のネットミュージックにおけるビジョンを「女性」にこそ担ってほしいと考えているんじゃなだろうか?だからこそライトピンクなカバーが可愛い/kawaiiを象徴するように、今回のコンピレーションは2014年から2015年以降のネットミュージックに向けて流したボトルメールだと、私は思いますね。