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音楽について

2013 〈MY BEST ALBUM 25〉~No.17→No.11

【No.17】Danny Brown - "Old"

Old [帯解説・歌詞対訳 / 国内仕様輸入盤] (BRFG009)

カニエ・ウェスト『イーザス』が各メディアで年間ベストアルバムのトップに輝いているが、確かにカニエのそれはヒップホップのジャンルに止まらず縦にも横にも斜めにも、新しい音楽を生もうとする意欲に長けた作品だったと思う。だが新しい音楽への挑戦という点に限っていえば、このダニー・ブラウンのアルバムも負けていないと思う。エミネムに代表されるデトロイト発の32歳。2011年のミックステープ『XXX』ではメトロノミー、フリート・フォクシーズなどをサンプリングネタにぶっ込み、彼自身もレディオヘッドなどを聴くことからその幅広いリスナーセンスにはイマドキの時代感があると言える。自分はヒップホップ関連に詳しくないのでラップがどうとかスタイルがこうとか全く説明できないが、それでも二部構成に分けられ、スクールボーイ・Q、エイサップ・ロッキー、Abソウルなどを客演に招くその人脈とキュレーション能力、さらにバッドバッドノットグッドやオー・ノーが音像を組み立てているなんて情報も加わったらこれはとう聴かない理由はない。前歯は無くとも古き良き時代や新しい音楽に対して爪痕を残す刃がある。捲し立てながらもキッチュな彼のキャラクターも含めて、2013年何回も再生ボタンを押してしまったアルバムです。

《追記》このアルバムのツアーと複数のフェスに出演したDB。外仕事としてはやはりRustie"Attak"、Ghostface KillahとBADBADNOTGOOD"Six Digrees"への参加は話題性も含め非常にリスナーを楽しませてくれた。さらにFlying Lotusの取り仕切るBrainfeeder入りしたBusdriverの新作『Perfect Hair』にも参加し、Jeremiah Jaeプロデュースの下、Aesop Rockと共に参加した"Ego Death"はとにかくその才能の坩堝が見事に調和した楽曲だ。その他2008年にミックステープとしてリリースした『How Soup』をリイシューしたりと、今年は過去、現在、そして次作への足掛けとなる人脈作りなど総合的に活動していた印象。レコーディング状況は分からないがこれは長いインターバルを心配せずとも、新作はドロップされそうだ。

 

【No.16】Factory Floor - "Factory Floor"

Factory Floor

ファクトリー・フロアやカット・コピーの新作は2013年においては逆に新鮮だった。4つ打ちのエレクトロミュージックってもう日本しかノレない!、なんて気分でいたらそれは極論過ぎる考えでしたね。オーソドックスなエフェクトとウェーブに生音もコミットして踊れる。それこそアンダーワールドやケミカルブラザーズなんかが受け入れられやすい日本だからこそ、このFFのアルバムもBGM的感覚で広まってほしい気もする。テクノっぽいだけで根本はハウスやディスコミュージックを軸にしているであろうファクトリー・フロア。Optimo、Blast First Petiteを経てDFAからデビューするという高学歴な経歴にも納得のセンスが随所に光っている。そりゃ、ニュー・オーダーやスロッピング・グリッスルの面々からも注目されるわけだ。

【No.15】FKA twigs - "EP2"

Ep2 [Analog]

アルカが共同プロデュースを行ったモデル兼シンガーの新作EP。M1「ハウズ・ザット」からアルカ節が全開。クリック音なのかビートなのか。エフェクトなのかノイズなのか。ダブやエコー、リバーヴなどを駆使し、あの手この手でFKAツウィグスを謎めいた存在に仕立て上げている。アルカ同様、とかく掴みどころが全くないのだが、ヴォーカルがハッキリと存在していること、あくまで“共同プロデュース”という点で彼女自身の意識を少なからず感じられることに関してはアルカのミックステープとは異なる。個人的にはM2「パピ・パシィフィ」のトリップポップ感あるバラードナンバー(?)がたまらなく好きだけど、これはフルアルバムや来年以降の校外活動(コラボや客演)にてその魅力がよりメジャーなモノになっていくかもしれない。期待と作品濃度を評価して選出。

《追記》去年書いたこの短い文の内容がどこまで真実となったかは皆さんがご存知の通りで。1st AL『LP1』のリリースまでの期待感、その前後におけるライヴクオリティなど去年とは裏腹に積極的にメディアへ露出する彼女には少し違和感も持った。ただ、それがLordeのようなポップスターとしての側面でも、ましてやアンチポップシーンという側面でもない、あくまで抽象的な存在としてのアイコンとして活躍してるのは面白いかな?2015年1月には来日公演も実施。さて夏フェスは?

 

【No.14】Daft Punk - "Randam Access Memories"

Random Access Memories

ダフト・パンクが生音?という疑問点は自分にはあまりなくて、ここ最近のEDMシーンやエレクトロミュージックの進化を見れば自ずとそういう部分にアンチテーゼを投げかける音楽は出てくるだろうなぁ、と予想はしていた。でもそういう反逆的な部分はほっぽり出して、とにかくムーディーなディスコ/ファンクミュージックを楽しそうに作り上げている。『Human After All』が生んだEDMの流れはいまだに余波を感じるけど、今作も負けず劣らずの威力を持っている。「Get Lucky」の爆発的なヒット、ジョルジオ・モロダーからパンダ・ベアーまで温故知新なベクトルに舵を切ったのも彼らが2013年における音楽シーンに出した一つの答えだろう。レコーディングもアナログ機材にこだわり、英国ではレコードの年間売上アップにも貢献している。そして来年のグラミー賞にて遂にパフォーマンスをすることから、もう少しだけこの『RAM』現象の余韻は続くだろう。ナイル・ロジャースやジュリアン・カサブランカスも参加しているだけに、やはり人選に抜かりはない。

《追記》なんといっても今年1月のグラミー賞におけるパフォーマンスでしょう。結果、賞自体も5部門を受賞した今作はPharrell Willliams、Nile RodgersのオリジナルゲストにStevie Wonderを加えたスペシャルメドレーを、レコーディングにも参加したNathan East (Ba)、Omar Hakim (Dr)、Paul Jackson Jr. (Gt)、Chris Caswell (Key)がサポートを務めるというステージが実現。これ以後Pharrell『G I R L』に参加したのみで、ツアーやフェス出演もなかった2人。来年はどのタイミングで顔を出すことやら…

 

【No.13】Death Grips - "Govemment Plates"

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先行フリーダウンロードされた「Birds」を聴いた時はその素行の悪さに落ち着きを見た…と思ったのはまさに素行の悪いフェイクで。蓋を開けてみればより研磨されたエフェクトとハードコアラップの殴り合い。前作『 NO LOVE DEEP WEB』の騒動はまさにエキセントリックだったし(契約していたエピックレコードとリリース時期で対立。後に自身のサイトにてエピックの承諾なしでフリー公開)、今年1月には初来日を果たしたのも相まって新作の動向なんて全く気にしていなかった。そして2013年11月14日、突如発表された今作はおそらく日本人からは一番遠くにある音楽だと思う。J-POPを日常的に耳にする私たちにはある程度”展開が予測できる音楽”が無意識でも馴染みとして浸透している。それがデス・グリップスの音楽には微塵も感じられない分、これを刺激として摂取できることが出来れば…もうこの音楽の思うツボ。他のアーティストや音楽を引用して彼らの音を説明しようにも、何とも中途半端になってしまうだけに、まずは聴くことが最優先順位になるバンドだと思う。そういうキッカケを作る意味でも“フリーダウンロード”という手頃さと拡散方法は彼らの活動スタイルにフィットしているし、レコードとライブパフォーマンスとのギャップも含めて、多角的に楽しめる音楽だ。

 

《追記》えっーと…デスグリ、解散しました!!笑。いやホントに急だったので今更その出来事を振り返るとやはり唐突過ぎたなぁ、と。Bjorkをフィーチャーした2CDアルバム『the powers what b』を2014年中にリリースすると発表した後、そのディスク1にあたる『niggas on the moon』のみフリー公開されているが、後半の『jenny death』の公開を前にバンドは解散してしまっている。バンド自身は「リリースはする」と述べていたので今後作品として公開されるだろうが、それが年内なのかは未定。因みにBjorkは直接的参加ではなく、あくまでヴォーカルのサンプリング権を承諾したに過ぎないらしい。最近のニュースではこの『Govemment Plates』の12インチがHarvestよりフィジカルリリースされ、そのクレジットにて映画『トワイライト』シリーズで有名な俳優のロバート・パディンソンが"Birds"でギター参加していたことが明らかになった。

 

【No.12】Travis - "When You Stand"

Where You Stand

文句ナシに彼らのアルバムの中で一番好きなアルバムだ。そうやって「最新作が最高傑作」だと思わせてくれるバンドは早々いないし、キャリア15年という彼らがそんな野心的な情熱を一番トラヴィスらしい形で作品化してくれたことが何よりも嬉しい。もちろん『Invisible Band』『The Man Who』のような名盤も、今作を聴き返すと思わずCDラックから引っ張り出したくなる。世界を跨いでレコーディングされ(ロンドン、ニューヨーク、ベルリン、ノルウェーなど)マイケル・イルバートをプロデューサーに迎えた今作はオープニングナンバーの「Mother」からすでにクライマックス。まるで耳元で歌われているかのようなフランの美声に酔いしれ、コンスタントだが芯が1ミリも揺らがないバンドプレイにも胸が熱くなる。思えばブリットポップ期真っ只中デビューしたこのバンドに一番足りなかったのは、野心的な部分だったかもしれない。でも、今作を聴けば分かる通り、表に出さないファイティングポーズというものがこのバンドの強みであり、何気無しに良質なメロディーと演奏を実現したという意味では、デビューから17年経った今、最もトラヴィスらしい金字塔を打ち立ててくれた作品だ。

 

【No.11】Arctic Monkeys - "AM"

AM

 ズルい。ズル過ぎる。何がズルいって、毎回このバンドには「時代」がついて回るから。1~4枚目もそうだけど、バンド内での流行りがその時のアルバムのテーマ、さらには世界的なミュージックシーンとクロスオーバーしてしまう法則がある。それは絶対に意図していないだろし、ネットとライブ、ハーフ&ハーフの爆発的デビューから今まで一貫して起こっている。この『AM』もその延長線上にあり、やっぱり「アークティック・モンキーズの流行り」が作品化されたアルバムだ。引き続きジェームス・フォード(シミアン・モバイル・ディスコ)をプロデューサーに置き、M7ではピート・トーマス(エルヴィス・コステロ等のサポートドラマー)がポーカッション、M8のギターにはビル・ライダー・ジョーンズ(ex ザ・コーラル)が参加。そして今回もジョシュ・オムクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ)がM3、11でコーラスワークを披露している。ゲスト参加の顔ぶれを見ても大きな驚きはないし、寧ろ今回の『AM』によって“アクモン”から“アークティック・モンキーズ”へと完全移行できたと思う。高速BPMは他のEDM専門DJがやればいいし、女々しいラブソングはXファクターあたりのアイドルが歌えばいい。投げやりに見せかけて自らのロックンロールライフを転がり続ける彼らだからこそ、スローバラードやコーラスワークに力を注いだのも納得。だからこそもう“アクモン”なんていう略称は似合わないし、これからも好き放題やってほしい!としか言えないんだよね。それなのに自分達で略称とも受け取れるタイトルまで付けて…そこも踏まえて、やっぱりズルい。

 

 ≪No.10→No.4に続く≫