読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

out-focus

音楽について

2013 〈MY BEST ALBUM 25〉~No.3

 【No.3】Phoenix - Bunkrupt!

Bankrupt!

“不死鳥”の名を掲げたバンドは、ここ日本から遠く離れたフランスはヴェルサイユでその殻を破った。ソフィア・コッポラ(現在Vo.トーマスの妻)監督作『ロスト・イン・トランスレーション』(2003)の挿入歌としても起用され話題を呼び、2009年に発売された4thアルバム『Wolfgang Amadeus Phoenix』はその年のグラミー賞にてオルタネイティブ・ロック部門の座に輝く。そしてグラミー獲得後、4年のスパンを経て産み落とされた最新作には『Bunkrapt!』(=破産者)と名が付けられた。まるでグラミーというアメリカンミュージックの土台で、フランス人である自分たちが一躍トップバンドとして担ぎ上げられている状況を皮肉っているよう。そしてその中身はというと…ハンパじゃなく"ド"の付くポップアルバムだった。

デビュー以前からAirDaft Punkなどと深い繋がりがあるフェニックス。フレンチポップな側面を持ちながらも、ハードで過剰な演出までもロックやエレクトロへとシフトさせていくところはバンド名に恥じぬ立ち振る舞い。それはリードシングル「Entertainment」にも強く表れている。アジアンなシンセと軽快なドラム、その背後にて鳴る歪みの効きまくったギター。3分強で聴かせるには勿体無いほどのギミックが前のめりなテンションで爆発しまくっている。

2ndシングル「Trying to Be Cool」もアジアンテイストなシンセが特徴的ではあるが、トーマスのヴォーカルを活かしたミドルテンポな部分で少しエスニックな香りを漂わせている。前作同様にポップではあるけど、この2曲を筆頭に全トラックがフランスともアメリカとも表しにくい雰囲気なのが、なんとも愉快。

今年フェニックスはこのアルバムを従えて数々のフェスに参加。中でもデビューからお互いをリスペクトし合い、新作『Random Access Memories』の全貌が世界各国で注目されていたダフト・パンクとの共演が噂されたロラパルーザは話題になった。全世界に向けてウェブキャストされたものの噂された共演はナシ(一応アルバムのティーザーがスクリーンに流れ、参加ミュージシャン等が発表された)。しかし同フェスではR.Kellyとの共演もあり、2013年における彼らのハイライトライブとなった。

f:id:junji0412:20141130161916j:plain

※コーチェラフェス後のバックステージ。R.ケリーと肩を組み笑い合う爽快なワンショット

さらに、このフェニックスというバンドは〈おもてなし〉も欠かさない。前作同様、アルバム発売後に多数のミュージシャンへリミックスを手掛けてもらっている。「Entertainment」をDirty Projectors、Hot Natured、Blood Orange、Dinasaur Jr. 等がリミックス。

「Trying To Be Cool」をBreakbot、A-Trak、Soul Clap等が再構築している。

この2曲に関してはバンドのSoundCloudにてステム毎のダウンロードが可能。探してみると様々なミュージシャンがリミックスして遊んでいるのがわかる。以下『Bunkrupt!』のリミックス集にはAriel Pink、Sleigh Bells、Gesaffelsteinなども追加されているので是非アルバムと共に聴き比べて楽しんでほしい。


”フェニックスのアルバム”というだけで一筋縄ではいかないことくらい、発売前から自分でも分かっていた。ただ、今回のアルバムに限ってはフランス人としてアメリカの賞を獲得し、“フランス人としての自意識”が沸々と湧き上がってきた結晶だと思う。グラミーを背負うのではなく、自らはフランスのバンドとして、トリコロールを這おうことに躊躇することのない鮮やかでタフなポップを鳴らすことが役目であるのだと、彼らは考えていたのではないか。その愛国心と自意識の衝動が欧州でも米国でもない、アジアンテイストなサウンドエフェクトを導入したのが奇妙ではあるが、このバンドらしいファッションセンスだと、胸を張って言おう。

 

 《追記》

この『Bunkrupt!』制作の裏側を追ったドキュメンタリーフィルム" INITIALS P.H.O.E.N.I.X."がNoiseyの企画で全4編で公開。(以下Part 1の映像。2,3, 4は各リンクから)


2014年はワールドツアー後半戦序盤の1月にここ日本に上陸。スタジオコーストという彼らにしたら小規模でのライヴを運良く体験することができたんだけど...まさにバンドキャリアとしも今が頂きだと言えるほどの盛り上がりだった。もうノイズからなだれ込む「Entertainment」のイントロとそれを覆うストロボのライティングを始めに約2時間の圧倒的で絶対的なパフォーマンスには、涙も汗も筋肉痛もお土産にするくらい激しく興奮しました。今年はその単独公演の他に、夏はサマーソニックにも登場していて、作品としては去年だけど、Phoenixとしての当たり年は間違いなく今年だったでしょう。

おそらく今後は休暇に入るだろうけど、しばらくはこの熱量を保持したまま生きていけそう(笑)。さらに追記として以下に上記にはないPhoenix『Bunkrupt』に関するSoundCloud上のリミックスをまとめておきます。ほぼ全てフリーダウンロードできます。

 

さらにこれは自分のメモとして。Phoenixとはデビュー以前から親交があるDaft Punkの前身バンドであるDarlin’のデモトラックが公開。


The Beach Boysのカバーなんですよね。これとオリジナル曲「cindy, so loud」が英国音楽誌「Melody Maker」で「a daft punky thrash(=のたうち回るマヌケなパンク)」と酷評されたことから"Daft Punk"が生まれるのだけど...実際の誌面がコチラ↓

f:id:junji0412:20141217113258p:plain

※付箋部分が例のフレーズ

まぁ、確かにそう言われて仕方ないほどのクオリティではあるけど(個人的には好み)。因みにDarlin'は現Daft Punkの2人(トーマ、マニュエル)に加え、Phoenixローラン・ブランコウィッツ(Gt/Key)からなるパンクバンドだったんですよね。今では両者ともグラミー賞を獲るほどにまで躍進したあたり、メロディーメーカーも良い仕事したな(皮肉にもね)。

以下Darlin'の未タイトルのデモトラック