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音楽について

2014<MY BEST ALBUM 20> ~No.3~

【No.3】Stars - No One Is Lost

No One Is Lost

極彩色のネオンサインが今最も似合うバンド、それがStars。2001年のデビューから数えて今年で13年の経歴を持つバンドが、通算7枚目にして遂にそのポップの全貌を明かした。

2013年7月に2nd『Heart』(2003)と3rd『Set Yourself on Fire』(2005)のリイシューが発売されたことで新作への期待は高まっていた。2012年リリースの『North』でもシンセサウンドを強調した今作に見られる80’sディスコへの強い関心は感じられたが、そこには3rd時に見られたバンド自体の革新性が若干影を潜めてしまっていたように思う。だが、彼らがその方向性に迷いなく立ち向かい、今作『No One Is Lost』のように完全にポップスとしての箍が外れた理由にはやはりDaft PunkArcade Fireの新作に伴う成功があるだろう。それこそバンドとしてスタートし、2人となってその才能を開花させグラミー賞では稀代の名パフォーマンスを見せつけたDaft Punkは『Random Access Memories』で同じく古き良きディスコやハウスミュージックを肉体化してみせた。そしてStarsと同じカナダから羽ばたいたArcade Fireは『Reflektor』でJames Murphyをプロデューサーに迎え、今までにはないダンサンブルかつ悪魔的な力を自らのものとして見事に使いこなした。この両アーティストの新作がセールス、評価、そしてライヴパフォーマンスの全てにおいて成功と呼べる反応を次々と更新していくことで、きっとStarsは次作への確信を掴んでいたのではないだろうか。

その確信が現実のものになった新作では、今まで彼らを形容する際に用いた“カナダのインデイーポップバンド”という言葉がチープに思えてくるほど、バンドであることに改めて胸を張り、ポップスとして消費されていく自分達を受け入れている。街の喧騒から印象的なギターリフを響かせる<From The Night>がまさにその象徴で、膨大な音の中でも埋もれる事のない強靭なメロディーと皆を楽しませるエフェクトさえあれば何をやっても大丈夫。そんな確信と自信がアルバム全体を通してキラキラと零れるほどに溢れてくるのだ。元々俳優としても活躍していたTorquil Campbellと盟友Broken Social Sceneの作品にも幾度となくヴォーカル参加するAmy Millanの男女ツインヴォーカルも、今作では楽曲のカラフルさに負けず豊かで伸びのある歌声を聞かせている。<Turn It Up> などにおけるミディアムでアコースティックな要素も融合させた曲では特にハーモニーの秀逸さが効いている。

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宅録から始まった音楽が仲間を集ってバンドサウンドとなり、これといった挫折はないにしてもどこか解放しきれない状態で歩み続けてきた例はいくつもある。「最高傑作」という褒め言葉は常に取って付けられたように扱われる言葉だと思うが、そのバンドにとっての「最高傑作」とは過去での実績や実例を下に、自らの固定概念の殻を破った時にこそ使うに相応しい。だからこそ“7枚目にして最高傑作”という謳い文句は決して間違いではないし、ミニマムでアンビエンスな音楽がそのまま高い音楽性と言われるような現在だからこそ、派手でロマンチシズムを追求した彼らを推したいのだ。

 

以下、彼らの今年のトピックを。
・現在行われているツアー記念で『No One Is Lost Tour EP』というフリーEPがメール登録することでフリーダウンロード可能となっている。<Blue Is The Colour>と<From The Night (A Tribe Called Red Remix)>はこのEPのみでしか公開されていない。

・2014/11/10にNYはブルックリンで行われたツアーのライヴ音源が全曲分ダウンロード可能。

→「Stars: November 10, 2014 Music Hall of Williamsburg」(FLAC / MP3※直リンク

The Smiths, PJ Harveyのカバーをチェック(The SmithsカバーはTorquilによるアコースティックパフォーマンス)。