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音楽について

Bandcamping Vol.2~Next Indie Girl's【part.1】

 以前、Bandcamp上で気に入ったバンドやユニットを特集した記事を書いたが、それから約半年、今の音楽シーンに飛び出していくであろうアーティストが山のようにネット上で回遊しています。すでにメディアで取り上げられたり、もしくは個人ブログを中心に人気を獲得していたりと、その音楽がより多くの人の耳に届く経緯には絶対的な法則がない状況です。それでも、メディアや知名度ある人の発言を含め、何かしら情報が拡散されるにはその時々の潮流があるし、何かしら解かりやすい/受け入れられやすいカテゴリーに収まることで浸透する場面を最近は多く見かけます。

junji0412.hatenablog.com

 今回はそんなカテゴリー分けの中でも女性シンガー/ヴォーカルを軸にした特集を展開。最近は日本でもアコギ女子やギター女子等の特集が組まれたりと、ビジュアルを含め多種多様なカテゴライズがあります。

ここでは毎日、毎週、毎月と、情報過多のネット回線網の中でその都度自分の琴線に触れては強く残ったバンドやシンガーをピックアップ。導入としてCourtney Barnett、Loneladyを始めに、Bandcamp上で展開されている女性の音楽に焦点を当てて紹介しています。おそらく記事を分けることになるかも...!?

Courtney Barnett - sometimes i sit and think, and sometimes i just sit

Sometimes I Sit And Think, And Sometimes I Just Sit [輸入盤CD] (HA0036CD)_110

90年代“コートニー”といえば間違いなく“ラヴ”であり、その流れで"左利きでジャガーをかき鳴らし咆哮する"といえばカート・コバーンを連想するだろう。彼女の名とプレイスタイルから彼らを連想してしまうのは当然であるが、こういうよくある”比較対象”についてはメディアの軟弱さを嘆くとしよう。それでも、そんなメディアや批評家に対してカウンターパンチャーとしてではなく、ラウドなギターとシニカルなリリックで首を垂れさせるだけのオフェンシブなガレージロックに、誰もが思わず汗ばんでしまうはずだ。

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メジャーやインディーという垣根すら知らない中で早々と自主レーベル<MilK! Records>を設立し、6曲入りの1st EP『I've got a friend called Emily Ferris』をリリース。2013年にはEP2枚をコンパイルした『The Double EP: A Sea of Split Peas』を同レーベル発売したが、そのジャケットには「富嶽三十六景」(葛飾北斎)が掲げられていたのも、日本人が興味を持つトピックの1つとなったはずだ(現に彼女の祖母が日本に長期滞在していたことがあるらしい)。

タスマニア大学を中退するも、そこでアートやデザイン等を学んでいた経歴も非常に面白いが、ジャケットにしても音楽にしても、そんな学を下敷きにするしてない、決して型にはまることのない一筆書きの即興性で磨き上げられている。リード曲でもある<Pedestrian At Best>では彼女自身が道化師(Clown)となっているが、仮面と素顔の境界線を狂気にも刹那にもすり替えてクールにファズを効かせて歌い出すバーネット嬢には、2015年以降も痛いくらいにシーンに中指立てていてほしい。

ampmusic.jp

[INTERVIEW] Courtney Barnett | Monchicon!

※追記:そんなコートニー・バレット、今年10月に初来日が実現!大阪と東京で各1日ずつ、計2公演のみですがライヴを行うようです。これは観たい!チケットや公演概要についてはここから→Courtney Barnett|LIVE INFORMATION|SMASH [スマッシュ] Official Site

さらに僅か8秒だけど日本のファンに向けてのメッセージも。

 

・Lonelady - Hinterland

Hinterland [帯解説・歌詞対訳 / ボーナストラック収録 / 国内盤] (BRC457)

2010年にリリースされた『Nerve Up』を聴いた瞬間、「これはマンチェスターの音だ!」と何の知識もない状況でガッツポーズしたのがもう5年も前とは。若くして名門WARPに才を認められたJulie Campbellのソロプロジェクト、それがLoneladyなる才女の正体である。Gang of FourThrobbing GristleNirvana、R.E.Mなどに感化されたそのインダストリアル・パンクの、ギタリストとしてのLonelady以上に幅広い音楽ジャンルとして、この1枚のアルバムの中で表現されている。前作よりもより鋭さを増し、硬質的でどこか虚脱と熱情感がせめぎ合うこの2ndに至るまでに重要だったのは、紛れもなく2011年にJulie~名義で参加したJah Wobbleとの共作『Psychic Life』での経験だろう。自身の作曲/レコーディングプロセスとは異なる環境下での作業は、『Hinterland』におけるメロディーの強靭さと、ディスコティックな楽曲におけるポップスでも聴ける多様性などの部分で活かされている。

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見た目やアートワークにおけるファーストインプレッションがそのまま等号として中身の音楽とリンクするアーティストも多いが、Loneladyはそんな等式以上に奥深さと麗しさでリスナーの脳内を魅了してくれよう。Patty Smith, St.Vincent, Hole、そして上記のCourtney Barnett等、エッジの効いた媚びない女子のロックミュージックが好きな人は必聴。

mikiki.tokyo.jp

 

01. シャルロ - ハロー、グッバイ

 頻繁ではないが時折Bandcampで"Japan"のタグを追うことがある。4月上旬にふとタグ検索した中で見つけたこの曲。すでに50回以上再生しているほど気に入っているが、より多くの人に聴かれるべきポップソングの桜前線を今まさに北上させるべくここで紹介したい。2010年頃から活動を開始した河野直己によるソロプロジェクト:シャルロによる新曲は、antarctica(イラストレーターのだふく、デザイナーのたつひこによるクリエイターユニット)が手掛けるアニメーションクリップのテーマ曲として書き下ろされたもの。ヴォーカルに西山小雨(ex:雨先案内人)を迎え、さらにマスタリングエンジニアにはクラムボン七尾旅人での仕事で知られる木村健太郎氏を起用。二人の少女の東京での暮らしを描いた物語に寄り添う形での歌詞とやさしさに満ちたメロディーが疲れた体にゆっくりと染み込んでくる。都会の夕暮れ時、仕事で疲弊した身体を電車の揺れに預けながら聴いてると涙がこぼれてくる。現在だふく氏のpixivにて同物語の漫画が公開中。このプロジェクト全体と合わせて楽曲も要チェック。

02. No Vacation - Amo XO

 サンフランシスコの男女4ピースバンド。ヴォーカル兼ギターのSabrina MaiBasil Salehによるユーモラスな掛け合いが心地良く、歌モノではドリームポップを、インストではミニマムテクノやネオアコ調など、ジャンルレスにバンドスタイルを使い分けているあたり非常に芸が豊富だ。< August>ではゲームの『スーパーマリオ』をサンプリング利用してたり、<Lovefool>ではそのタイトル通り80年代のR&Bやポップスからの影響も感じられる。ムード感あるベースや各トラックの短さなど、1ドルの課金で購入するには大いにお釣りがもらえる作品だ。

03. Le Pie - Secrets

オーストラリアの中心地シドニー、そこから公共交通機関で10~15分という立地の良さで今現在日本でも観光地として知られているニュータウンから出てきた苦労人:Le Pieを紹介。未だ<Secrets>1曲のみしかアップロードされていないが、1トラックにみるオルタナティブロックの才は磨けば光るモノがある。どうやら下積みが長く、当初は様々なパンクバンドのドラマーを掛け持ちしていたらしい。その後、50~60年代のガールズグループに興味を持ち始め、自身でそれらをバックグラウンドにしたインデイーポップを制作するようになったのだとか。整った容姿とスタイルからは相反するように煙たいほど荒い質感のギターとタイトなドラムが彼女の人生を見事に映し出している。

04. iET - Try to Be

 ロッテルダム(オランダ)で活動するシンガーソングライター。2011年頃から宅録にあのて音源制作を開始し、2014年6月にはあのD'Angelo『Voodoo』のエンジニア兼ミキサーでもあるRussell Elevadoをプロデュースに迎え、1stアルバム『So Unreal』をリリース。この<Try to Be>はそのアルバムから4か月後に発表された現時点での彼女の最新作。イントロのエキゾチックアルペジオから現代ジャズとの邂逅を匂わせる。それもそのはずで、ベースにHugo den Oudsten(Kim Hoorweg、Mary Davis Jr.などのサポート/レコーディングで活躍)、ドラムにSalle de Jonge(LeslieNielsen)といった新進気鋭のジャズミュージシャンを起用している。シンコペーションの妙が彼女のたゆたう声質と見事に調和しており、この路線でのアルバムやEPを是非聴いてみたい。

 05. Danica Dora - TOGETHER IN SPACE

NYのシンガーソングライター。1986年に起こったNASAチャレンジャー号爆発事故によるインスピレーションからアートワーク、アルバムタイトル、そして各トラックにおけるコンセプトが定まったらしい。決してネガティブな内容ではなく、むしろクラシックポップにおける讃美歌のように落ち着きと憂いが共存した作風になっている。デビュー当時のNorah Jonesを彷彿させるまとわりつくような声が印象的で、ブルーノートに所属していても何ら不思議ではない。しかし、後半の<Good as It Gets><I Don't Belong>では一枚フィルターを通したヴォーカル処理がなされており、ここから宇宙空間へと次元が移動したことを明確に意識させるようなアレンジがあったりと、決してジャズのみに特化した作品ではないことをしっかりと説明しておきたい。

06. Emily Yacina - Pull Through

引き続きNYのシンガソングライターだが、こちらは正統派なアコースティックサウンドを主体とした女性アーティスト。2011年にnyp形式でリリースした『Flood』を気に入り、その都度彼女の音楽をチェックしている。『Flood』リリース後は『Reverie』(2011), 『Bloom』(2013)といったアルバムフォーマットをマイペースに制作しては発表している。

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PORTALS - PHOTO ESSAY: EMILY YACINA

そんな彼女だが、最近はRyan Hemsworthの新作にも参加して話題のAlex Gと共通項のある人物なのだが、それがあまり知られていないのでここで記載しておこう(といってもAlexの2012年に発表した『TRICK』にはしっかり"thank you emily yacina for singing on advice"と書いてあるし、Emilyも『Bloom』にて"Thanks to Alex G for your help on Glow"とメッセージを送っている.。なんといってもAlex G"Harvey"のMVには2人で映ってる!)。元々フィラデルフィアのハイスクールが同じで、芸術の専攻授業にて出会って以来、お互い共同制作を行っていたとか。その時期の音源がお互いのどの作品に関係しているのかは定かではないが、どうやらその関係は今現在も続いている模様。本作に話を戻すとAlex Gとの共振も納得で、改めてアコースティックを軸にしたベッドルーム・ポップが質よく生成させれている。Cat Powerのように尖ってはいないが、閉鎖と解放を同時に鳴らし歌うことのできる新生として、Alex Gと共に認知しておいて損はないはず。

07. Dark Furs - Hearts (Fuck You, Goodbye)

 Chad PhilippsSuzanne Mayからなるロスのポストパンク/ガレージロックユニット。2013年作のデビュー盤『Dark Furs EP』ではドリームポップとモダンロックを強調させた作風だったが、『En L'air』ではポストパンクの要素も追加。ヴォーカル兼シンセ担当のSuzanne Mayがアナーキーの象徴として、このユニットのギャップを生む意味でも非常に特異なキャラだと思う。2015年の現在進行形である<Hearts>はガレージ感全開の出だしとSuzanneの変則歌唱がトラック全体のノリをキメており、年内中にリリースが予定されている新たなEPもおそらくはこのベクトルで制作されていることだろう。"Mood Rock"という自己形式を掲げているあたり、ファッショナブルなプレイスタイルも心掛けているはず。この先も楽しみな2人組。

08. Forth Wanderers - Tough Love

モントクレア(カリフォルニア州)とニュージャージー出身のメンバーで結成された5人組。まるでティーンモデルかのような容姿とスタイルを持ち合わせた紅一点のヴォーカルAva Trillingを先頭に、全員がまだ大学2年で20歳前後というフレッシュなプロフィールのバンドだ。2013年に1st EP『Mahogany』を発表。アートワークに映るモノクロのAvaが醸し出すノスタルジアそのままに、スロー/ミドルなインデイーポップを鳴らしている。初アルバムである今作はギターで作曲を手掛けるBen Guterlのメロディーメイカーとしての才がさらに向上。そんな人懐っこいメロの上で歌うAvaの歌も合わせて、全体を覆うローファイなサウンドはアンダーグランドなバンドを好む音楽ファンには広く受け入れられるはずだ。

2015年現在はNYを中心にライヴハウスツアーを行っている模様。Avaは同じくモントクレアのトラックメイカーLOOSIDの<Hang On>に参加。これまたアートワークを飾るAvaの姿が素晴らしい。もちろん中身のアーバンなトラックにも要注目

09. Helena and the HorsesBRUTUS EP

ここまでアメリカを中心としたアーティストをピックアップしたが、今回はムーミンやサンタクロースで有名な北欧フィンランドから。ヴォーカル/キーボード、作曲からバンド全体のプロデュースまでを手掛けるHelena Astolaが率いるカルテットバンド。Neil Young & Crazy Horseを意識したネーミングもバンドのベクトルを想像させるが、フィンランドらしいカレワラを根源におき、クラシックやオペラが広く親しまれている国の文化を丁寧に参照したようなインディーポップは、個人的にも非常に興味深い。バンドのTwitterアカウントがBat for LashesFlorence Welch(Florence and the Machine)などをフォローしている通り、モダンアートにおけるコンテンポライズをベースに、芸術における音楽表現をインデイーポップという親しみやすいフィールドで広める上でもきっとこういう女性が先頭を切ったバンドはもっとポピュラリティを獲得するべきだと思う。

10. Cyberbully Mom Club - FOOTWEAR

 ボストンのインディーレーベルToo Far Gone Recordsに所属するフィラデルフィアの男女4人組バンド。バンドといっても音源の大半がヴォーカル/ギターであるShari Heckのベッドルームポップで、。どうやら去年9月まではHeckのソロプロジェクトだったらしい。今年3月にリリースされたこの『FOOTWEAR』も引き続き彼女のローファイなアコースティックサウンドが特徴的で、おそらくは次作からバンドスタイルとしてアンサンブルを備えたトラックを聴くことができそうだ。聴いての通り、彼女の自室マイクでレコーディングされたであろうトラックは、閉鎖的でありながらどこかセンチメンタルにはなりきらない尖った攻撃性を隠し持っている。それは前作『amy locust whatever』でも、処女作『hair piles』からでも変わらないCMCの突出すべき個性として機能している。これがバンドでのセッションやスタジオレコーディングなどのプロセスを経た時、一体どんな顔をして音楽を鳴らしてくるのかが今からでも楽しみで仕方がない。因みにほぼ全作1ドル(もしくは約2ドル)で購入可能だ。Bandcampで未だ課金したことがないという人も、これを期に購入体験をしてみてはどうだろう?