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音楽について

Monthly Recommend~March

 すでに2か月の遅延が発生してますが、3月によく聴いた/気に入った作品です(※未掲載のところは後々必ずやアップします...)

Kendrick Lamar - To Pimp a Butterfly

To Pimp a Butterfly

この作品ナシで3月を、いや、もう2015年を語るのはナンセンスだ。それほど今年を代表するマスターピースとして多くの人々に届けられたと言っていいし、少なくともKendreck Lamarにとっても今作以前と以後ではヒップホップだけではなく、ポピュラーシーンにまでその存在を知らしめた意味でもエポックメイキングなアルバムになったことだろう。と、饒舌に話を進めようにも、5月現在に至るまでにこの作品について語られるべき/紐解くべきトピックは既に完結を迎えている。それは以下に張り付けたブログや記事に目を通してもらいながら音源を聴けば確かである。それでも、彼自身がこれから各フェスでのパフォーマンスにてこの『To Pimp~』をどのような表現構成でアウトプットしていくのかで、再び新たな側面での作品性が見えてくるだろう。
2014年8月に起きたミズーリファーガソンでの黒人射殺事件(詳しく知らない人は是非この事件を知って今作を聴いてほしい:米ミズーリ州の警官による黒人少年射殺)を発端に、半年が経とうとする5月現在も、こと音楽という表現においてその余波は未だ漣ではなく、大きな波としてアートワークやアルバムコンセプトに反映されている。各トラック“黒人”やそれに纏わる新旧様々な引用や比喩がなされており、ケンドリック・ラマー自身のアイデンティティとも密接に繋がるプライベートな出来事までもが題材となっている。<Wesley's Theory>や<King Kunta>ではある人物をそれぞれモチーフとしていて、各センテンスでアメリカや黒人問題について切り込んでいる。しかし、本作において重要なセクションはそれらプロローグを経た、ケンドリック・ラマー自身の堕落から再生までを描いたストーリーだと思っている。それは<These Walls>から<i>まで続く彼自身の後悔と懺悔、そして逃避から自身(=<i>)を見つけ、自信までも取り戻す...そんなフォースを巡る旅が巧みなサンプリングテクニックとゲスト参加によって陽の下に晒されている。27年間における彼を形成してきた数多の要素がエンドロールの<Mortal Man>で解放され、皆の共感を促すように幕が下りるそのミニマムで壮大な物語こそ、人種差別やアメリカと黒人という大きな時事問題を考える上で、いかに個人が、民衆の生活が大切なのかを言い表しているのかもしれない。

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もう1つ、このアルバムにおいて説明しておきたい点があるなら「歌」と「詩」(ポエム)の区別と親和性だ。それは各トラックがラマーの卓越したライムを軸にした「歌」のパートと、次曲へのブリッジでもありながらアルバムコンセプトについての言及とも取れる「詩」のパートで明確にセパレートしていることだ。結果として作品全体としてはまとまりがあるが、「詩」部分ではほとんどと言っていいほど音が差し込まれていない。ここには何か彼自身が「音楽」と「言葉」を表裏一体のように捉えていて、音楽で世界は変えられないが言葉1つ1つの折り重なりが大きな変化を生む、という希望にも似た願望を解かりやすく表現したのではないか?とつい想像してしまった。

2014年までの音楽作品において求められていたのは即効性というか、批評や解説がなくともポップスとしてチャートアクションやクオリティの高ささえ良ければ世間も受け入れていく流れが生まれていた。だが、今年は違う。むしろ即効性はあれど、クオリティが高かろうと、一体どんな制作意図や背景があるのかを作品に反映し、かつそれをリスナーに押し付けるでもなく自発的に鼓舞や興奮を促すような音楽こそが取り上げられていくべきだと思う。音楽から派生するコンテンツが多すぎるのも如何かと思うが、この『To Pimp A Butterfly』ではコンテンツではなく叫びや嘆きを繋ぐセンテンスに焦点が当てられた、2015年に生まれるべくして生まれ、聴かれるべくして磨き上げられた高水準の代表作である。

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ASIAN KUNG-FU GENERATION - Easter / 復活祭

Easter

間もなく最新アルバム『Wonder Future』をリリースするアジカンから、そのアルバムをリードする先行シングルが届けられた。同曲含めアルバムに収録される全曲がFoo Fightersが所有するスタジオ"Studio 606"でレコーディングされたものだ。アメリカ=骨太なサウンドメイクを想像するだろうが、確かに全体を覆うサンドペーパーのようなザラつきやベースにおける厚みはアメリカ特有の音の持ち上げ方だろうと見受けられる。しかし、注目すべきはそんな小難しいことではなく、こんなにもベーシックでありながら、今までのアジカンではない、という革新性が120%強調されている点じゃないだろうか。長年アジカンのジャケットをデザインしてきた中村佑介を今回は起用しなかった意図も、単にビジュアルから変化を掲示するという安易なものではなく、ASIAN KUNG-FU GENERATION / アジカンの定めてきたボーダーラインをそれぞれが越えるためにしっかりとした意志疎通が為された上での決断だったはずだ。好みとしてはカップリングの<パラレルワールド>もBNT(Best New Track)に挙げて申し分ない出来だと思う。シンプルなコードとリフ、それらを支えるよりか対抗するが如く前でドライヴするベースなど、とにかく今のアジカンの推進力を明確に聴き取れるシングルとして3曲全てが黒いオーラを持って聴く者を祝福するだろう。

 

White Ash - THE DARK BLACK GROOVE

THE DARK BLACK GROOVE

DARK」「BLACK」「GROOVE」と3拍子揃ったそのアルバムは先に書いたアジカン、2月度のレコメンドに選出したBOOM BOOM SATELLITES同様に黒を全面に押し出したアートワークが特徴的。しかし、これがWHITE ASHの新作、となるとこれまた面白い考察ができる。the pillowsの「white ash」をライヴのSEに使いたくてそのままバンド名にした話は予備知識として、白と黒の表裏一体な関係性はそのままロックバンドとグルーヴへと転換され、それら両極が見事に混ざることなく際立っている。バンドの舵を握るのび太(Vo./Gt.)は以下のリアルサウンドの記事で今作の制作中にArctic MonkeysAM』、Daft PunkRandom Access Memories』、Pharrell WilliamsG I R L』、Sam SmothIn the Lonely Hour』などを愛聴していたらしく、これら愛聴盤からもヒット作に隠された確固たるブラック・ミュージックへのリスペクトを感じることができる。単に黒人音楽をアップデートするのではなく、ロックバンド:WHITE ASHで培ってきた鋭利さやフックの効いた楽曲構成などを当然のようにミックスすることで、今作はしっかりとバンドの歴史の最先端でありながら延長線上でもあり、また新章でもあると言えそうだ。上記のバンド以外にも<King With The Bass>ではMuseSupermassive Black Hole>を意識したベース&プログラミングが痛快だし、ラストを飾る<Gifted>ではどこか厳粛さを感じる重厚なオペラコーラスが今作を閉じるに相応しい。最先端ポップスにおける黒い血脈を引き継ぐ意味では、グラムロックや60年代ブリティッシュロックをリブートしている今作は、むやみやたらに文脈を引用する必要などないくらい”WHITE ASHの高み”を実感することができる名作だと思う。

ototoy.jp

realsound.jp

Tinashe – Amethyst

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 ブロデュース陣や内容は昨今のインターネットミュージック~フィメールシンガーに精通して面白いのに、何かパッとせずに流されてしまっているTinasheの新作。確かに今まで発表されたミックステープ『Reverie』『Black Water』に比べ、フォーマットリリースされたメジャーアルバム『Aquarius』では一気にR&Bポップスとしての王道を突き進めた印象が強く、ミステリアスなムードが削がれてしまったのは否めない。そんなミステリアスな雰囲気とメジャー作以降のラグジュアリーなセンスを組み合わせ、かつ自信の制作意欲の加速度を掲示する意味でも今回の『Amethyst』はピックアップしておくべき作品だろう。Ryan Hemsworth, LegacyRitz ReynoldsDJ DahiIamsu!などがプロデュースを手掛け、Khris Royal (Sax),  Dominic Angelella (Gt)らがプレイヤーとして参加。アンビエンス調のビートとファンキーなグルーヴにティナーシェの艶やかなヴォーカルが光る今作を聴くと、昨今の様々な人気シーンがそれぞれシンガーなどを通じて邂逅していることが分かる。

ねごと - VISION

VISION(初回生産限定盤)(DVD付)

とかくキャッチーなメロディーと変幻自在のアンサンブル。それらを肉体的、情熱的に表現する彼女たちのテクニックとアンサンブルの妙。エキセントリックでカラフルなバンド本来の強みと成長が遂に極まった、と言い切ることに何の躊躇もいらない。デビュー作『Hello!“Z”』、1st『ex Negoto』での攻めたポップスタイルには彼女たちのミュージックライフが色濃く反映されていたが、それはシューゲイズやプログレ、2000年代後半におけるUK/USのインディーミュージックなど海を越えた音楽家たちへの憧れでもあり、それは今でも感じることができる。その羨望にも似た衝動がより実験的で、セッション面においての詰め方とバンドとしての見せ方を追求する意味でコンパイルされたのが前作『5』だったように思う。結果としてメロディーやバンドとしての身軽さみたいなものが後退し、楽曲構成における難易度の向上とその反動が何か“迷い”を際立ってしまっていた。もちろん収録された曲単体でのポテンシャルは高かったが、果たしてこれがバンドの行き着くべき音の解答なのか?と、当時は不安にもなったのは確かだ。それでも、今この『VISION』を一聴したときそれら不安や迷いといった感覚は全て飲み込まれ、「ねごと」というバンドの成るべき、いや、鳴るべき姿を形成する重要なファクターになっていった。『“Z"OOM』を挟んだこともあってか、バンド本来のテクニカルな側面とメロディーに引っ掛かりを持たせるアンサンブルがここに来てバチッと噛み合っている。<コーラルブルー><憧憬>などはシングル顔負けの出来だし、<endless><透明な魚>では2ndでの実験成果が実を結んだかのように高騰感を兼ね揃えてポップスへと昇華されている。ここで今作を名盤と形容するには容易いのかもしれないが、ここから見えるは良き作品を作り上げた到達点での満足感ではなく、今後の4人の進化を約束する飛躍への中継点からの景色。だからこそ期待を込めて、名盤よりは傑作として今作を聴いてもらいたい。

eggman.jp

Swervedriver - I Wasn't Born to Lose You

I Wasn't Born to Lose You

 

 

サザンオールスターズ – 葡萄

葡萄(通常盤)

 

 

 

 

tricot - A N D Pre-Release Studio Live Session

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 2ndアルバム『A N D』のリリース記念として行われたスペシャルセッションの模様を音源化したEP。アルバムにも参加したドラマー5人を楽曲ごとに招き入れたこの日の模様はネットを通じて生配信された。Bobo、千住宗臣刄田綴色(ex.東京事変)、山口美代子、脇山広介(tobaccojuiceという凄腕ドラマーとtricotの一発勝負は、アルバムの内容を体現する意味でも非常に内容の濃い、そして異常な熱気に包まれたライブ空間を生み出していた。48時間限定でBandcampにてリリースされたこの日のライブ音源はBandcamp全体での"best selling"でもピックアップされ、48時間の合間に国内外問わず、様々な国と地域の人々にこの日のライブセッションは届いたのだった。アルバム収録曲から初披露された「Noradrenaline」「Niwa」など、幾重にも行われたリハーサルの過程を最大限の力でぶつけており、すでに定番曲といってもいいほど熟成されたアンサンブルを音源では堪能することができる。今現在は配信が終了しており入手することはできないが、以下にて「Niwa」のセッションの模様が見ることができる。

www.youtube.com

Adna - Run, Lucifer

Run, Lucifer