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音楽について

TopicUp Vol.3

01. モノクロームのグラデーションの可能性〜Diane Birchのライブを観て

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「現代のキャロル・キング」と称されてデビューしたダイアン・バーチ。初めて見たのが2010年のフジロックか。それから早6年。デビューから数えればもう7年経つのを考えれば先日行われた久しぶりの来日公演の出来栄えにも納得がいく。

最新作『N O U S』は通算3枚目のオリジナルアルバムにして自身初のセルフプロデュース作品になっている。そのアルバムを携えて行われた今回のライブ。内容は過去作からもカバーまで、アダルトなムードとバラエティー豊かな楽曲が彩る極上の仕上がりとなった。

https://www.instagram.com/p/BFOcCRQKYBz/

Diane Birch @Blllboard Live Tokyo

今回のツアーにはシャーデーバンドマスターでもあり、ソロワークはもちろんヴァネッサ・プレイとのユニット:ツイン・デンジャーとしても活躍するスチュアート・マシューマン(Sax/Gt)がダイアンの楽曲の骨組みをしっかりと支えている。そのスチェアートのプレイにも期待しつつ最新作に収録された「Stand Under My Love」から開幕。グランドピアノを中心にダークでヘヴィーなサウンドが夜の六本木をよりロマンチックなものにする。M3「How Long」ではスチェアートのサックスが低音の効いたダイアンの声を持ち上げ、アンサンブルのアクセントとしても、ステージ上の映え方としても非常に有機的な役割を担っていた。

本編中盤にはシャーデーSmooth Operator」をスチェアートと2人でカバー。原曲の魅惑的なジャズセッションとは少し距離を置き、ダイアン自身のブレスやタメにおけるヴォーカルの特色を軸に置いたムーディーなアレンジがとにかく心地よかった。

曲が終わるごとに「アリガトウ」と観客に顔を向ける彼女は演奏中と打って変わってとてもキュートな一面を見せ、誰もがその愛らしい素振りにノックアウトされそうになる。脇腹あたりにスリットが入ったシックでセクシーな衣装もビルボードライブの、六本木の夜のドレスコードとして100点満点でしょ。

途中アルバム未収録の「Juno」が自然とインサートされ、そのままボビー・コールドウェルWhat You Won't Do For Love」を艶っぽくアップデートさせフロアをアダルトなパフュームで染める。本編ラスト「Nothing But a Miracle」では時にハンドマイクで観客とのコミュニケーションを積極的に取っていた。歌い込みの質が高いだけにスキャットやピアノの滑らかさ、バンドとのチームワークも完璧で、才あるだけではなくユーモアも音にフィードバックされていたのが新鮮に感じた。

 

アンコールは「Nothing Compares 2 U」「When Doves Cry」と彼女が偏愛してるとも言えるプリンスのカバーを披露。どちらも力強いピアノの打鍵が楽曲に対する愛とリスペクトを象徴していた。繊細だが思いっきりがよく、丁寧だが斜に構えてはいない。音楽と相思相愛な関係を築いたダイアン・バーチのライブをバンドコンディションも最高なタイミングで見ることができたことに感謝したいと同時に、もっと彼女のバックボーンが垂れ流しなった作品も聞いてみたいと思った。アートワークやアーティスト写真然り、それはまるでピアノの白鍵と黒鍵のようにモノクロームな世界で、幾重にも音色を重ねてきた彼女の音楽が描く限られた色のグラデーションは、限りにない可能性をまだまだ持っていることを証明してくれた。それは紛れもなくダイアン・バーチの新たな音楽を聴きたいという欲求なんだけどね。

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www.billboard-japan.com

 

 

02. ミラーボールの下で笑い泣く

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ふと自分のiTunesを眺めているとモーニング娘。'16泡沫サタデーナイト!』の再生数がいつの間にか200を超えていた。「おいおい、俺いつの間にこんな聴いてたんだよ...」と嘆こうかと思う矢先、ほらまた再生してる。

もうね、軽く中毒です。多分モー娘。、いやハロプロ関連でここまで一聴してからヘビロデしている曲は過去なかったはず。過去に藤本美貴会えない長い日曜日」、Buono!初恋サイダー」、モーニング娘。シャボン玉」あたりはハマっていたけど、それとは違ってもっと根底から「あっ、これ好きだわ!」と発狂したくなる感覚。津野米咲赤い公園)がつんく♂信仰の多作家なんてのは有名で、なおかつSMAP「Joy!!」において彼女が築いた”グループへの飽くなき愛情表現=絶対的な存在定義=世の中(時代)を代弁するということ”という時代を象徴するアンセムの要素を今回も見事に踏襲している。赤い公園では黄金律なコード進行から奇想天外な転調を繰り広げ、時に馬鹿らしく時に甘酸っぱい言葉を紡ぐ彼女のクリエイティビティがまた別のベクトルで発揮されている外仕事においても、「泡沫〜」はかなり王道路線である。むしろJ-POPのド定番を聴きながら作曲センスを養ってきた津野にとって王道を作る難しさは作曲の楽しみの一つでもあるのかもしれない。

 

ハロプロ全体としてつんく♂のワンマン体制からの解放に往年ファンが不安を覚えるのもわかる。つんく♂の音楽がそのままハロプロの音・キャッチコピーとなっていたのは確かだし、今後ハロプロ全体の最新曲がそれぞれつんく♂と比較されるのは避けられない。でもそれでいいと思う。いや、むしろ津野米咲に至ってはそれら過去の楽曲と比較され、同じディスコグラフィーに名を連ねただけでも十分だと感じているに違いない。そして歌っている本人たち(モー娘。のメンバー)たちがこの曲を一番楽しんでいる。さらにモー娘。に憧れ今現在アイドルとして活躍している面々からこの曲は賞賛されている。もうこれ以外にこの曲の説明はいらないだろう。 

あえて流行のネオディスコや鈴木香音卒業シングルについては書かなかったが、それらももちろんこの曲のポップネスを体現する要素としては必要不可欠だ。底抜けにタフで、踊ることに臆することなく、でも孤独とも手をつなぐ。さよならや苦しみを一人膝を抱えて叫ぶよりミラーボールの下でステップを踏みながら笑い泣く方が今の時代に寄り添っていると言える。人恋しいほどこういう曲は響いたりするんですよね。まだまだこの曲の再生回数は増えていくだろうな...

振りもノリやすいし、ライブでもハイライトになりそう

 

03. やはり星野源もハマった!J・ティンバーレイクの最新曲

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もっぱら最近は”ジャスティン”と言うと”ビーバー”となり、音楽以外でもやんちゃな彼のニュースが連想されるようになりましたね(それでも彼の最新アルバムは良かったけど)。でもね、真のジャスティンはやはり彼ですよ、ジャスティン・ティンバーレイク。実に3年ぶりとなる彼の最新曲「CAN'T STOP THE FEELING!」が最高にクールでハッピーで、間違いなくグラミーやスーパーボウルなどで披露されればハイライトとなるはず。

米国で今年公開されるドリームワークス最新作『Trolls』のテーマソングとして書き下ろされた新曲。彼自身も声優を務め、アンナ・ケンドリック、グウェン・ステファニーラッセル・ブランドらと共演している。そんなヴォイスキャストらが愉快に踊りリップシンクするMVがコレ。

そして彼と言えばその甘美なルックスとスタイルを武器に見るものを引き込むダンスパフォーマンスも魅力だ。そんな彼の魅力が詰め込まれた彼自身のオフィシャルMVは以下。白い衣装と軽快なステップワーク、脱帽。

様々な職種や世代の人々が踊る姿はファレル・ウイリアムスHAPPY』を連想させる。と言っても今現在彼は次なるアルバム制作も行っており、そこにはファレルに姿もあることから次回作はほぼ間違いなくこの路線を強く推し進めた内容になることだろう。

前作『The 20/20 Experience』によるプロデュースワーク&マーケティングは完璧だった。トム・フォードを着た彼がジェイZと共に奏でた「Suit & Tie」から幕を開け、翌年の賞レースも見事に制覇。エンターテイメントとプロフェッショナルを極め、プロデューサー、コンポーザー、ソングライター、パフォーマー、アクターとしてパーフェクトな仕事っぷりにはもう感服するしかない。アルバムの発売は今年暮れか来年か?いずれにしてもこの曲を鬼リピートして待つべし。