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音楽について

そのクリエイティヴに衝撃を受けた〜ポップ・ミュージックの変容となる"引き金"とは

ちょっと"衝撃を受けた"。

この衝撃はここ最近よく感じるんだけど、それらは大概"日本ではない海の向こうの情報"からで、大半はヒップホップやR&B、もしくはライヴにおける刹那的なドラマなどでしか感じていなかったように思う。


もちろん、日本の音楽でも衝撃を受ける瞬間はある。ただ、結局はその時々のプロモーションや奇をてらったコマーシャルであったりと、"シンデレラのかぼちゃの馬車ばり"に時間が経てば元通りなものばかり。CD文化が未だ根強い日本で、シングルCDチャートが存在することも、きっとそんな瞬間でのアクションに業界が躍起になっているからなのかもしれない(もちろん、それらがJ-POPとしての良薬である時もある)。でも実際、何か大きな変化を巻き起こしたいなら、それ相応の条件を成立させるための下準備と鍛錬が必要なはず。

そんなことを日々の音楽を聴きながら考えていると、このツイートが自分のTwiterのタイムラインに流れてきた。

 

どうやら音楽メディア"CINRA.NET"とw-inds.が手を組んで行う企画のようで、単にリミックスを作成し、大賞に選ばれたら音源化、みたいな流れではなく、それぞれ"橘慶太との共同制作"と"CINRA.NETで橘との対談インタビュー掲載"が特典なっており、これが一過性の話題作りではないことをしっかり掲示している。

そして確信である"衝撃を受けた"のがこの記事。上記リミックス企画を橘自身が経緯も含めて語っている特集である。

www.cinra.net

 

企画の話はもちろん、ここ数年彼らがアイドルから完全にアーティストとして独自のポジションを築き上げよう試行錯誤していた経緯なども語られている。そんな濃厚なインタビューで、個人的にこの人は別格だな、と痛感させられたのがここ。

(今回の企画を通して"サウンドクリエイター同士のクオリティーを上げていくこと"も目的とし、海外のクリエイター同士の交流を日本と比較した上で)

慶太:僕が3年間勉強したことを誰かに1年かけて教えれば、その人は2年間を他のことに使えるわけじゃないですか? その2年間で勉強したことを僕に教えてくれたら、相乗効果でお互いがレベルアップできるんですよね。

 
シングル「We Don’t Need To Talk Anymore」のグローバルなサウンドディレクション最新アルバム『INVISIBLE』でみせた明確なアイドルからの脱却。さらに橘自身のツイッターにおけるマニアックでクリエイティブな発言など、数年をかけて、おそらく大多数の否定を乗り換えながらこの沸点を迎えたんだと思う。材料の選定から切り方、火加減にアク取り、その場から離れることなくじっくりと煮込み続けた彼らの音楽は心底リスナーの音楽的満腹中枢を刺激したことだろう。


We Don’t Need To Talk Anymore」のテクニカルな部分、『INVISIBLE』の作品におけるグローバルな視点などは以下の記事を是非。


3月にアルバムがリリースされてから約3ヶ月。橘君が刺激を制作からのインスピレーションを受けていたBruno MarsにしてもThe Weekndにしても、ここ日本では体験することができない規模(主にスタジアム)のライヴを世界各地で行っている。スマホに目を落としフリックすれば、Calvin HarrisDJ Khaledがまもなく2017年を決定づけるアルバムを用意しているのだ。それらは日本人がマストで聴かなければならない作品、とは言わないが、少なくとも彼ら(w-inds.)は間違いなくチェックして次なる覚醒の肥やしにするはずだ。

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 今回"衝撃を受けた"発言やリミックス企画に関しても、より多くのクリエイターとリスナーを紐付けるものとして作用することだろう。それを証明するものとして、様々なアーティストがほぼ同タイミングで楽曲ステムの配布をし始めたりしている。

Francis and the Lightsは「See Her Out」のトラック・ステムを一部ファンに向けて提供(もちろん普通にダウンロードできます)

GotchことASIAN KUNG-FU GENERATION後藤正文も新曲「Taxi Driver」のステムを配布。実際は2ndアルバム『Good New Times』の全曲分を配布したかったとか。以下コメントも。

[News] Free Download 新曲「Taxi...|Gotch / 後藤正文 / ASIAN KUNG-FU GENERATION / ゴッチ

そして彼もリミックス・コンテストをスタート。トラックメイカーや専用機材でなくてもリミックスが作れるアプリ"8Stem"を使用しているので、遊び感覚でも参加可能。

 
同時多発的にリミックスという、プロから素人までがフラットに楽しめる土壌に愉快な遊び道具(ステムやトラック)を設置するクリエイターの共鳴に、2017年のタイムリーな制作欲 を垣間見た気がする。

そんなクリエイティヴは、リミックス企画を挟んでいよいよツアーで肉体的にアップデートされていくことになる。おそらく、彼らがここ数年着々と土壌から慣らしてきた音楽フォーマットが、ここで極まるはずだ。洒脱でゴージャス、一挙手一投足の隅々まで血肉の通ったパフォーマンスを、きっと自分のような新規のリスナーにも見せつけてくれるだろう。


そして、沸々と湧き上がる期待の中、橘自身が所属するプロデュースチーム"DMD"から彼自身も制作に加わったという新曲がシェアされた。平成元年生まれのフィメール・シンガー:Chicaを迎え、テラスハウスからインスピレーションを受けたというこの曲も、非常にトレンディなトラックメイクが施されてる。


EDMからトロピカルハウス、フューチャーベースを駆け抜け、J-POPであることも肯定して仕上げられてる。これはZeddAlessia Caraを迎えた最新曲「Stay」や、さらにポップネスとの親和性を高めたPorter RobinsonMadeonによる「Shelter」とも、少なからず共通項を見つけることができるはずだ。

 

これら最先端のグルーヴをバンドのフォーマットに落とし込んでいるのが、それこそ記事で橘自身も挙げているyahyelNulbarich、さらにはWONKがデジタル限定で発表した「Give Me Back My Fire」も、ここまで挙げた楽曲の延長で聴けば、自然と身体に馴染んでくることだろう。

急遽差し込むyahyelの新曲「Iron」もタイムリーだ。

記事の締め括りでは、今後は”オタクが勝つ時代”と評していたけど、これは我々リスナー側にも言えるんじゃないかなと思う。Twitterにしてもブログにしても、プロか否かは差し引いて、ある程度影響力を感じさせる人には、必ずコンプレックスにも等しいオタク気質が存在しているはず。全てにおいてオタクが勝つべきとは思わないが、衝撃を受けたクリエイティヴを生み出すオタクたち(=w-inds.)こそ、この瞬間のポップ・ミュージックを内側と外側から変容させていく引き金になり得る存在だと、ちゃんと言い切っておきたい。

 

※おまけ
大半は2016年より以前のものだが、未だフリーダウンロードに対応しているステムデータ

Phoenix - Trying To Be Cool (Stems) :ステム・ダウンロード(直リンク)
Phoenix - Entertainment (Stems) :ステム・ダウンロード(直リンク)
・Local Natives - Hummingbird Stems
・ラブリーサマーちゃん - ベッドルームの夢(Vo & Cho)