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音楽について

コンテンツを生み出すネットワーク~SMAPはSAIKOU DE SAIKYO NO OTOKO~

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 Johnny's net~SMAP

 

“誰か Mr.Sを知ってるかい”

 

はじまりはそんな言葉から。

「Mr.S(ミスター・エス)」というコードネームを付けられ、数多の女性と関係を持ち、様々な逸話とおぼろげな後姿だけが語られる、なんともミステリアスでダンディーな世界観だ。

 

<Mr. S -SAITEI DE SAIKOU NO OTOKO->というテーマを掲げたSMAPのニューアルバム『Mr.S』、これがまた最高で最高峰のスペックを誇っているのだ。お世辞でも大袈裟でもなく、今現在のJ-POPとはなんぞや?という問いに対しての答えがこの17曲を聴けば見えてくる。それはワールドミュージックの流行り廃りとリンクしながら、SMAPという記号を表に多くのクリエイターがそのセンスをフルに活かすこと。何がポピュラーで何がアナーキーなのかを曖昧にすることが重要なのである。

 

しかし、ただ曖昧にすることを良しとしているのではない。進行方向がわかるからこそ見える目的地がある。だからこそテーマやコンセプトを定め、雑食な日本の音楽リスナーに対して先行的にナビゲーションしているのである。クリエイターがSMAPをどう料理しても<最低で最高な男>というナビがある限り、リスナーは最低で最高な男をSMAPに置き換えながらアルバムを聴ける。

 

そう考えると今現在の5人はまさにルパン三世のような存在と言える。表舞台に立って本業を軸にしながら多くの人を巻き込んでいき、最後には鮮やかに任務を遂行する。やるべきところで結果を出して、それなりの結果を出してしまうんだから。これはとてもジャニーズらしい過程だと思うし、多くのグループを抱えるジャニーズ事務所内でもSMAPにしか成し得ないディレクションだ。嵐でもKinKi Kidsにも、もちろんSexy Zoneにもまだ早い。いや、他のグループにもそれぞれ魅力的な演出テーマはあるけど、後にも先にもSMAPにしかできないメソッドが今回の『Mr.S』にて極まったと言える。

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実はコントでも『ルパン三世』をやっていたり...笑

 

多くのクリエイターを起用するのは何もSMAPだけではないが、グループコンセプトやタイアップなども含めて最終的にネタとして解釈させないことも重要だ。今回のアルバムでも川谷絵音(indigo le End, ゲスの極み乙女。)、和田唱TRICERATOPS)などはある程度のフィット感が予想できたが、Koji Nakamura(LAMA, Nyantoraなど)やSALUといった面々は楽曲提供やフィーチャリングの経験はあれど、SMAPという表紙の中で一体どんなトラックメイクをするのか興味津々だった。正直な話、5人5様の声質でありながら、歌唱スキルはトラックとしてのヴォーカル面には少々難があるのがSMAPの大きなハードルと言っていい。もちろんそれらのウィークポイントを逆手に楽曲の面白さとしているのは知れたことだが、今回のアルバムではそんなウィークポイントも<最低で最高な男>を紐解く一つのヒントとしてデザインされている。この作家のクリエイティビティとアレンジャーのデザイン性、SMAPの演技力(ここではテーマやコンセプトを象徴する意味での演技)があってこそ、最低な部分も魅惑的に、最高な部分は官能的に感じられるのだ。

 

途中、SMAPルパン三世に例えてみたりしたが、よくよく考えればルパンこそ<最低で最高な男>を地で行く存在だなぁ、と。ここではあくまで今回のアルバムテーマを主体に掘り下げたのでルパンのような存在が頭の中を過ったのだが、楽曲それぞれのテーマが描いている人物像も、なんとなくだがルパン三世に出てくるキャラクターに当てはめていくことができそうだ。こういう発見とクロスオーバーを促してくれるだけの話題性がこれでもかと凝縮されているSMAPのアルバムは、自由な発想から行動に移行し、そこから多くのフォロワーとクリエイターを生み出す“コンテンツのインターネット”として作用している。そのネットに繋ぐのは簡単。ただ聴けばいいのだ。そしてその末端であるリスナーが次のクリエイターとして新しい回線を引くことで、またSMAPは<最低で最高な男たち>になるのである。

 

….と、ここまでは着飾って話してみました 笑。個人的にこのアルバムでのベストトラックは「やりたい放題」なんですけどね。「シャレオツ」以降に見るダサカッコいいオジサマ像を見事に別視点で表現してるなと。どちらも大竹創作氏の楽曲。ここにまた新しいSMAPのコンテクストが誕生したかと思うと、今後「SMAPへの楽曲提供」を目標にする若いミュージッシャンやシンガーがいても、何らおかしくないですね。

Mr.S(初回限定盤)[2CD+DVD]

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