TopicUp Vol.4
01. Donnie Trumpet & The Social Experimentの未発表曲
去年フリーダウンロード作品でありながら数々のメディア年間ベスト上位に顔を出した傑作『Surf』はもちろんチェック済みでしょう。Chance The Rapperをメンバーに据え、トランペットプレイヤーのDonnie Trumpetを中心に結成されたこのバンド。ジャムセッションのようで入念なサウンドプロダクションを経て制作されたであろうアルバムは、チャンスの出目であるアシッドラップはもちろん、ネオソウルやシカゴブルース、時にポストロック的な解釈も可能なフィーリングをこちらに投げかけてくる。
そんな『Surf』から漏れた未発表トラックは実際いくつ存在しているのだろう?必ずしもバンドとして5人が参加することが義務づけられているわけでもない、流動的なスタイルを持ち、大物から新星まで幅広くフックアップするその形態からおそらく収録された倍の曲数はレコーディングされたかもしれない。そんな推測の域を出ることのない予想をほんの少し確信に近づけるトピックとして、このミックスは存在する。緩やかで繊細なハーモニーを始めにチャンスのクセのあるライムが耳に届けられる。ハーモニーとヴォーカルは音楽の波を心地よくサーフしていく。2分も過ぎればミニマルな音色にシフトし、ボトムの締まったビートがアーバンになった気持ちをより加速させてくれる。
5分50秒あたりから突如ディスコトラックがインサートしたかと思えば、その後はアンビエントフォークを基調とした空気感が場を支配する。8分を過ぎるころ、再びバンドはアンサンブルの波にライドし、涙モンの美しきピアノを見ながらそのまま最後まで「Surf』の成分を含み終幕を迎える。
わずか11分足らずのトラック集(ミックス)が、彼らの最新EPを聴いたかのような、そんな満足感と達成感。チャンスは最新作『Coloring Book』 を完成させ(こちらも素晴らしい内容)いま現在はバンド自体の動きはほぼ休止状態だが着実に『Surf』の余波が音楽シーンを浸食し始めている。
この『Surf』と『Coloring Book』の圧倒的なまでの話題性と革新性はアメリカの賞レースやチャートの評価基準にすら打撃を与えた。ミックステープなどフリーダウンロード可能な音楽作品もグラミー賞などの候補に挙げる署名運動が巻き起こり、実際グラミーやビルボードなどはこれら「音楽作品」の定義において早ければ来年からでも何らかのアクションがあるのではないかと期待されている。。
確かに今年はRihanna『ANTI』, Kanye West『The Life Of Pablo』などのフリー&ストリーミング展開が確実に世界に衝撃をもたらしている。かと思えばそれら価格にこだわらない先駆者であったRadioheadは最新作『A Moon Shaped Pool』をサプライズリリースしたものの、iTunesを始めデジタル配信を皮切りに、Apple Musicでのストリーミング、約1ヶ月半遅れでのCD発売、そしてオフィシャルサイトでLPやブックレットが付いた限定盤を用意するなど、リスナーそれぞれの音楽環境に適応したコンテンツを揃えている。どれが正しいかではない。誰がすごいのかでもない。音楽が聴かれる際にリスナーが求めているニーズと、そのニーズのおける既成概念を打ち壊す何かがとても重要視されていて、ますますアーティスト自身が作品に対していかに意思を反映させていくかが注目されるようになっている。「The First Time」で混ぜ合わされたトラックが今後彼らの手によってリワークされるかはわからないけど、フリーダウンロードで得られる11分の未開地への冒険は、現状の音楽産業におけるエポックメイクな事件の序章の一幕にしか過ぎない。
02. "Forever Joy Divison"を掲げた夜〜New Order 16.05.27
とんでもない夜だった。特別な夜になることはわかっていたのにそれでも意識は飛びそうになり、終演後はすぐさまその熱を誰かに伝えたくなった。体調不良で微熱とだるさが思考回路がちぐはぐになっていた5月末日。New Orderが処方した音楽の特効薬は風邪以外のものもキレイに治してくれたみたいだ。
最新作『Music Complete』を携えたツアーであり、来日公演自体はサマソニやフジなども含めて今までも数多く行ってはいる。しかし単独公演となると29年振りらしく、つまりは自分の生まれる前(今27歳)にまで遡ることになる。
ゲストDJの石野卓球がニュー・オーダーのリミックスはもちろん、「Blue Monday」などがサンプリングやマッシュアップされた楽曲のリミックスも回し、フロアを温めていく(特にKylie Minogue「Can't Get You Out Of My Head」とのマッシュアップ「Can't Get Blue Monday Out Of My Head」は良かった)。
自分が足を運んだ5/27のセットリストは以下のとおり。どうやら5/25とは所々セトリが異なるらしく、両日行っても楽しめた単独公演になったよう。
New Order 新木場スタジオコースト、このセットリスト!これはすんごい! pic.twitter.com/OY3xYXngfQ
— m.jun (@Lockup_1960) 2016年5月27日
一番の盛り上がりは何と言っても「Atmosphere」でしたね。「Love Will Tear Us Apart」との流れはかなりドラマティックだったし、その先に「Blue Monday」を待たせておくあたり、バーナード・サムナーのサービス精神も感じた。
その反面、懐古主義すぎるような演出に少し戸惑いを感じたのも事実。懐古主義と安易に言い切ってしまうのは危険だが、ピーター・フックとの因縁を差し置いたとしても未だ”Joy Division”の影がちらついてしまっていた。せっかく『Music Complete』という新たな羅針盤を見つけたのだから、それを手に次なる目印を見出すべきではないのか、と。
しかし、たとえその懐古主義な演出を踏まえても、立ち止まらないニュー・オーダーの活動スタンスには敬意を表したいし、ライブ自体はポジティブなエネルギーが立ち込めていた。演奏スキルのアンバランスさは相変わらずではあるが、鳴らすべき音は鳴っていて、こちらが聴きたい/聴きたかった音楽を存分に聞かせてくれた。ピーター・フックとの関係修復なんて望まなくても、イアン・カーティスとジョイ・ディヴィジョンの名をいくら使おうと、良いレコードとそれを肉体化できる場所させ担保できていればニュー・オーダーがニュー・オーダーたり得る理由などいくらでもリスナー自身で見出せるはず。"Forever Joy Division" と掲げたこの夜は過去に終わってしまったバンドと過去を背負い続けたバンドがきちんと一つになった夜だった。
03 . 今年も必ずダウンロードすべし!アダルトスウィムのシングル企画
Adult Swimとはアメリカの子供向けケーブルチャンネル「カートゥーンネットワーク」の深夜放送休止時間の枠を利用し、18歳以上の若者を対象としたプログラムを組んでいるパートタイム・ネットワークを指す。あの「カーボウイ・ビバップ」がアメリカで初放送された際の受け口もここであり、日本のアニメも数多く放送されてきた。
そんなAdult Swimはテレビプログラム以外にも多方面のカルチャーコンテンツを展開している。その中にはもちろん音楽もあり、インディーからメジャーまで数々のレーベルと提携して企画を行っている。
毎年夏から冬の半年間にかけて企画されるこの「Adult Swim Singles」は隔週でバンドからトラックメイカーまでが新曲/未発表曲を発表していくもの。まずは現在(6/9)までに公開されている3トラックをどうぞ。ちなみに...全部フリーダウンロードなので。
※ダウンロードは公式サイトから
・ビジュアルも毎年凝っており、公式サイトではスクロールで各トラックの切り替えが可能
ここまでのスケジュールは...
DJ PAYPAL, VHÖL, D∆WNまでは配信が完了。今後予定されているアーティストは...
Against Me!, Blanck Mass, Clark, Die Antwoord, Earl Sweatshirt/KNX, Elysia Crampton, Flying Lotus, HEALTH , Jenny Hval, Jlinm, Kitty, Metro Boomin' , Mica Levi, Mike-Will Made It, Protomartyr, Rae Sremmurd, Run the Jewels, Ryan Hemsworth, Sannhet, Thelonius Martin ft. Joey Purp, Tim Hecker, Vince Staplesと豪華絢爛。とにかく毎週サイトをチェック。