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音楽について

2016年上半期について(邦楽/洋楽アルバム・トラック)

2016年も気づけば8月ですが...鮮度としては落ちましたが、一応公開しておきます。

以下、アルバム、トラックごと。

賛否ありますが一見さんお断りな形にはしたくないので洋楽/邦楽と分けてます。

そして当たり前ですが、あくまで”個人的主観”の選定ですので。悪しからず。

 

洋楽アルバム

01. Chance The Rapper - Coloring Book

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02. James Blake - The Colour In Anything

ザ・カラー・イン・エニシング

03. Anohni - Hopelessness

ホープレスネス

04. Beyonce - LEMONADE

05. clliping. - Wriggle

06. RadioheadA Moon Shaped Pool

07. Skepta - Konnichiwa

08. David Bowie - ★(Blackstar

09. Rihanna - ANTI

10. Aoife O'Donovan - In the Magic Hour

11. Sunflower Bean - Human Ceremony

12. PJ HarveyHope Six Demolition Project

13. Anderson .Paak - MALIBU

14. Diane Birch - N O U S

15. Knxwledge.  - HEX.9.8_ 

〜総括〜

15枚、ほぼ順不同ではあるが再生回数順に記載。やはりチャンス・ザ・ラッパーは凄まじかった。 豪華な客演は言わずもがな、自身の才能と人脈を世間の広告塔には触れさせず、ただひたすらに音楽へと投資する。これがストリーミングオンリーでレーベルを通してないことこそ、時代が添い寝すべきと選んだ男たる器量。ジェイムス・ブレイク、アノーニはそれぞれ超えるべきボーダーライン(ジェイムス・ブレイクならポストダブステップの担い手として、アノーニはアメリカという国への憎悪にも似た怒り)を超え、自身と音楽におけるアイデンティティーが一つになり、まさに才能を開花させたと言っていい2枚。ビヨンセ、リアーナはそれぞれサプライズリリースを起点に、片や妻である前に女性であること、片やスキャンダラスを過去に今現在の私がなぜ「女」であるかを自覚的に発散し、エンターテイメントのド真ん中を大手を振って歩いている。どちらもセンセーションかつタイムリーで、参加した客演陣もそれら作品の意義に賛同...というよりは共犯者になる覚悟で参加している。

変化という点で言えばレディオヘッドデヴィッド・ボウイは”変わること”を不変のスタイルとして貫き通してきた結果、新たな結晶となってまた革新を更新することになった。残念ながらボウイはアルバムリリースを見届けるかのごとく、その二日後にこの世を去ったことは、その生涯全てを一つの音楽絵巻にしてしまうかのような結末でなんとも彼らしいと思った。レディオヘッドはトムやジョニーのソロワークが見事にバンドに反映されている。直接なアプローチではなく、劇伴的なストリングアレンジやシームレスで変化自在なビート。それら全てがレディオヘッドの不変で変則で、変容こそバンドだということを証明しているかのようだ。

スケプタ、そしてこの中ではリリースが真新しいclipping.はヒップホップ作品ではあるがとにかくスキル、クオリティがバカ凄い。グライム片手にD・ダブル・E, エイサップ・ナスト,ファレル・ウィリアムズなどを迎えた今作で間違いなく去年から続く飛躍をさらに加速させていくことになるスケプタ。clipping.に関してはリミックスなども公開されたのち突如リリースされ、リリックビデオなのに全くリリックが目で追えないという一興もかましてくれた。他にもケンドリックやドレイク、カマイヤー, リル・ヨッティなどヒップホップはここ数年で間違いなくトレンドセッターの中心にある。カニエの『The Life Of Pablo』は独自性があり企画やコマーシャルも目を引いて、クオリティも申し分ないけど...単純に好みの問題ですね。

 その他、サンフラワー・ビーンは久々にファッションやアートを背負った80'sニューヨークラウドなロックバンドが出てきたことに賛辞を贈りたい。ダイアン・バーチは来日公演にてシャーデーやプリンスもカバーしていて、カバーやデュエットなどの企画盤も後々はトライしていただきたい。イーヴァ・オドノヴァンはタッカー・マーティンをプロデューサーにトニー・ファタード(バンジョー)、クリス・シーリ(マンドリン)、サラ・ジャローズなどが参加。前作以上にアメリカーナを拡張することに成功している。

とにかく話題作や名盤、音楽に縛られることなく様々なアート/カルチャーとユニゾンしていく作品が数多くあった。「〜振り」と久々にアルバムフォーマットでのリリースとなった作品もその大半が沈黙期間のハンデキャップなどを物ともせず、それどころか十分なウォームアップ期間として潜伏していたことを裏付けする結果を出している。リリース形態も多様な時代を象徴するように、それぞれが適切なフォーマットを模索し、選択し、チョイスする。自然災害、テロ、政治腐敗...イギリスはEUを離れ、アメリカはトランプという悪しきジョーカーを引く可能性を示唆している。間違いなく世界はカオスの淵に立っていて、次の瞬間に背中を押されてもおかしくないのだ。世界と日本では音楽が担う役割や権威が大きく異なり、それはここ数年で顕著になっている。だがそれぞれ興味深い発展もある。星野源やKOHH、BABYMETALやSEKAI NO OWARI、あなたが好きなミュージシャンは世界の音と繋がっている。なので洋楽を聴くことが敷居の高いことと思わないでほしいし、世界の隅々で起こりうる問題を知る上で音楽も立派な情報源であるのだ。どんな音楽が自分に刺さり響いたか、僕らは2016年、また試されている。

洋楽トラック

01. The Stone Roses - Beautiful Thing

02. Radiohead - Daydreaming 

03. Justin Timberlake - Can't Stop The Feeling

〜総括〜

すいません、時間の都合上トラック単位での選定は難を極めまして...

しかし、この3曲”しか”聞いてなかったと言っても間違いじゃないくらい耳を奪われていたのは確かで。「All For One」でカムバックを成功させた後、この「Beautiful Thing」でストライクゾーンど真ん中を射抜いたローゼズ。リユニオンしたバンドの大半が過去の栄光にすがり縛られ、それを拭い去るためクリエイティビティに火を付けるも挫折する、という例をいくつも見てきた。そして、ローゼズの再結成、そして新作のレコーディング。興奮と恐怖が紙一重で押し寄せてくるこの感動(?)をローゼズで体感できる時代が来るとは思いもしなかった。その感動の波が2016年、ついに形となったわけで。武道館での単独来日公演が夢幻と消えた2016年(レニが肋骨2本を骨折)にちゃんと音源は届けてくれたこと、それが「ザ・ストーン・ローゼズの音楽」であること。ただそれだけで満足な上にこんな上質なグルーヴを放出しているんだから。「20年前のあの曲のような〜」なんてありがちなクリシェは使いたくない。無駄なものはいらない。2016年のローゼズの音楽、それだけでいい。

自分はフジロックでのアトムス・フォー・ピース、去年ホステス・クラブ・オールナイターでトム・ヨーク(DJ)と、形式の異なるトムのソロワークを実際に見ている。フィル・セルウェイのソロも、ジョニー・グリーンウッドの劇伴も、繰り返すがトムのソロワークも確実に最新作『A Moon Shaped Pool』にフィードバックされている。ストリングスとギターのディレクションは間違いなくジョニーが行ったはずだが、心に奥底にある悲壮感や絶望感のうわばみを描くのはやはりトムのヴォーカリゼーションあってこそだと思う。弦楽器も打楽器も全てがビートを構成していく。ここにはニール・ヤングスクエアプッシャーもOPNも目指せないレディオヘッド桃源郷があり、彼ら自身がその源流ともいうべき地点にたどり着いたのが最新作だ。その中でもポール・トーマス・アンダーソンディレクションを行った「Daydreaming」は映像と合わせることでさらに夢幻の世界に酔いしれることができる。句読点も起承転結もピリオドすら存在しない、ネットような世界で生きていることを快楽と取るかカオスと見るか。

日本では”男性ソロシンガー”とカテゴライズすると、どうにも波及力がなくなってしまう。平井堅秦基博三浦大知などここ日本でも男性で、ソロで才ある活動をしている人は数多く存在する。日本はイケメンや少女たちを集団でまとめ、ソロというと後天的な印象が持たれやすい。世界に目を向けてもその傾向がないわけではないが、そこには「確固たるスター性」を持ち合わせた、いわばカリスマが確かに君臨している。マイケル、そしてプリンスまでもが現世を去った。後継者は存在しない。空いた椅子は永遠に空席のまま、彼らの功績として語られる。ではジャスティン・ティンバーレイクは?ここまで読めば何が言いたいか分かるだろう。もう彼はマイケルやプリンスとは違う王座に座っている。たとえアニメのテーマソングであっても、声優として、プロデューサーとして関わっていたとしても、JTのスター性が生み出すブランド力には到底揺るぎなど生じない。アメリカで最もセクシーな男性の上位に当たり前のように名前が並ぶ彼が"Can't Stop The Feeling=感じずにはいられない"なんてフレーズを最高にファンキーなビートで言われたら...もう濡れるしかないでしょ。前置きは別として、日本にもこのファンキーなノリはトレンドとして機能していると思うので、芸人とか起用した日本版MVとか作らなくていいので、このMV丸ごと渋谷のビジョンで毎日流しておいてください 笑。

邦楽アルバム

01. BOOM BOOM SATELLTES - LAY YOUR HANDS ON ME

LAY YOUR HANDS ON ME(初回生産限定盤)(Blu-ray Disc付)

02. D.A.N. - D.A.N.

D.A.N.

03. odol - YEARS

YEARS

04. indigo la End藍色ミュージック

05. AL - 心の中の色紙

06. Negiccoティー・フォー・スリー

07. Galileo GalileiSea and The Darkness

08. NakamuraEmi - NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST

09. METAFIVE - META

10. 幾何学模様/Kikagaku Moyo - House in the Tall Grass

11. 雨のパレード - New generation

12. ミツメ - A Long Day

13. 南波志帆meets sparkjoy

14. 綿めぐみ - ブラインドマン

15. 岩崎愛  - It's me

〜総括〜

再生回数の多い順で15枚、そして自分の中で"2016の上半期”を意識した上で順序を付けました。

岩崎愛はロックの既成概念に縛られないミュージシャンが多数参加しながら、ミュージシャンたちのネームバリューを出さずとも彼女の音楽的素養の輝きが十二分に味わえる。アイドルではなくシンガー、のようでコンテンポライズされるさとり世代の象徴とも受け取れそうな綿めぐみの作品は一聴してその虜に。OBKRと酒本信太による通好みなトラックメイクが綿めぐみ自身のキャラクター然とした歌声に絡むことで、東洋と西洋を掛け合わせたテイストに。既成のアイドル像が世間に浸透しているからこそ生まれた音楽アイコン。ここまでコンセプトを詰めてると逆に隙を見つけたくなる。

ミツメの4枚目は1〜3枚目で積み重ねてきたトライ&エラーを見事にアンサンブルに昇華させて見せた秀作。とにかく今はライブを見たい。雨のパレードはアルバムタイトルを背負うに値するポテンシャルが備わっているのをしっかりとアルバムに繁榮せている。驚異のバンドMETAFIVEはそれぞれの音楽的バックボーンをネットワークを駆使して緻密に、かつダイナミックに構築し、それぞれが建設的にバンド/グループとして機能することができることが可能であることを実現させた。テクニカルなサウンドコラージュ以上に音楽の刹那的な高揚感を何度も体験できる。NakamuraEmiはRHYMESTERをリスペクトするなど、ヒップホップを裏地に"弾き語る"ことに新たな革新をもたらした。ライブも観たいし新曲も早く聴いてみたい。

この中で唯一アイドルグループなのがNegicco。いつかの古町どんどん(※新潟市古町を中心とした祭り)で見ていた体験が今では羨ましがられる経験として捉えられているほど、この3年余りでの飛躍は凄まじい。レキシやG.RINA坂本真綾などボーダーレスに見えて彼女たちの音楽性とシンパシーを感じられるクリエイターがチョイスされている。長澤知之小山田壮平(ex.andymori)を中心とし、藤原寛(ex.andymori) と後藤大樹(ex.andymori) を正式なバンドメンバーとして迎え、”AL”として初のバンド音源となるアルバムが『心の中の色紙』だ。弾き語りからバンドアンサンブルへブラッシュアップされた曲たちは荒々しさと豊かさを同軸上で奏でている。気鋭のソングライター二人の決して遊びではない本気がバシバシと伝わってくる。ゲスの極み乙女。が思わぬ形でスポットライトを浴びた今年。川谷絵音が本来音楽家として、そしてロックバンドとしてやりたかった本質はindigoの方にこそ注がれているような気がした。プログレッシブ・ロックという括りは煽りのようなもので、実際は生粋のメロディーメイカーとして歌謡史にも名を連ねるほどの人物だと思う。哀愁、悲哀、薄氷な愛、離別のための笑顔。マイナス70プラス30ぐらいの塩梅で人間の心の主成分を解読するバンド、2016年に他にいないですよ。

上位3枚へ。SuchmosやYogee New Wavesらと同じ年にフジロック(ルーキー・ア・ゴーゴー)に出演。それを機に調べたらBandcampに辿り着き、そのままズルズルその音の波にライドオンしていったodolの2ndアルバム。未だ20歳前半のバンドは成熟と未熟を内在させた言葉を紡ぎながら、スケールアップしようとより高い壁を飛び越えようと強く踏み切り板を蹴り込んだ。時代を歌うには日々を歌う必要があり、さらに日常の風景を、営みを、生き方を投射することも重要だ。ポップネスとインディー感を兼ね備えながら、ホールやアリーナを支配するためようなアンセムを今後生み出すことができた時、odolというバンドが今自分が想像する以上に面白いバンドになり得るんじゃないかと、もうすでにワクワクしてます。

同じく若い世代の中でも頭ひとつ、いや、むしろそういう坩堝を壊して出てきたバンドではないだろうか。洋楽エッセンスは確かに強い。アンニュイなほどブギーでディスコティック。アニマル・コレクティブやダーティー・プロジェクターで味わえる民族間を通過したグルーヴが彼らにもある。タイム感のあるセッションの要素も、クリックありきで緻密にコンダクトされたトラックもどれもこれもが卓越したスキルを物語っている。odol同様、この二組やそれこそSuchmosなども含めてフジのグリーンを埋め尽くしてくれたらそりゃ痛快だ。

 

何度も書いては消して、結果このような文になってしまった。抽象的な部分が多いことを先に謝りたいが、言葉にしようと必死だったことを少し理解しておいてほしい。

終着点が見えてからBOOM BOOM SATELLTESに感動したのか?いや、そんなことはない。いつだって感動や興奮はあった。川島道行の病気によってバンド活動が終わる。事実としてはそうかもしれないが、BBSの音楽が脳腫瘍によって遮られたバンドとは一度たりとも考えたことはないし、今後、自分の鼓動がその動きを止めるまで、そんな気持ちで彼らの音楽と向き合うことはない。雑踏を抜けた先に広がるシンプルな四つ打ちとリフレインの海。大海原への船出を告げるファンファーレ。近くにあった音が遠くへ飛ぶ。遠くにいた人が近くに来る。川島道行の歌は翼を携え、どこまでも遠くへ僕らを連れて行ってくれ、会いたい人を目の前に引き寄せてくれる。美しい。広がる可能性は人の持つ想像力を浮力に、メロディーとリズムと言葉を好きな場所に連れていってくれる。フォーマットとしてはシングルだが、彼ら自身が自負するように正真正銘、これはフルアルバムだ。たった4曲、僅か25分弱の音楽にBBSの軌跡が刻まれている。デヴィッド・ボウイの遺作となった『★』も同じく、終着点を決めた音楽家が最後に鳴らす音楽は決して「遺る」ものではなく「殘る」ものだということ。過去になろうと、音楽の持つ果てしない輝きを僕たちリスナーが目をそらさずに見つめていさえすればいいのだ。M4「NARCOSIS」の最後は川島の歌い出そうとするブレスで締めくくられる。決してこれからまた歌い出すというニュアンスでも、ドラマティックな逸話があるわけでもないだろう。このアルバムの最後は彼のブレスで終わる必要があっただけであり、それは彼らが常に音楽を駆使して自分たちに戦いを挑んでいた証でもあるのではないか。想像力を刺激し、多くの人に喜びと幸せをもたらせる。自分たちの血肉を削いででも。それは最後の最後、灯火が消え、煙が燻り終わるまで変わらない。そして消えゆく途中で灯りに導かれる人々が生まれていく。BOOM BOOM SATELLTESのラストアルバムはまた新しい火種を次の世代に灯したのではないか。そうであって欲しいし、自分もまた胸に何か熱い火種を今感じながらこれを書いていることを忘れない。

邦楽トラック

01. 宇多田ヒカル - 花束を君に / 真夏の通り雨

02. スピッツ - みなと

03. モーニング娘。16' - 泡沫サタデーナイト! 

04. 銀杏BOYZ - 生きたい

05. 雨のパレード - Tokyo

06. ストレイテナー - シーグラス

07. 欅坂46 - サイレントマジョリティー

08. Shiggy Jr. - Still Love You

09. LUCKY TAPE - MOON

09. 嵐 - 復活LOVE

11. PerfumeFlash (Cosmic Explorer Version)

12. 乃木坂46 - きっかけ

13.  林原めぐみ - 薄ら氷心中

14. CRCK/LCKS - Goodbye Girl

15. 乙女新党 - 雨と涙と乙女とたい焼き 

〜総括〜

こちらシングルは純粋にiTunesでの再生回数順。

解散してしまったのは残念でしかないが、乙女新党が残してくれた「雨と涙と〜」は各クリエイター(作詞:高橋久美子、作曲:日高央、編曲:ヤマモトショウ(ex.ふぇのたす)・rionos)の本気度が遺憾なく発揮された秀作。椎名林檎と相思相愛な関係性が見事に結実した林原めぐみのシングルは声優のカテゴリーから何百歩もはみ出したジェジーなトラックに。最近桜井和寿Mr.Children)が「良い曲」と太鼓判を押してカバーしたことがニュースにもなった乃木坂46は、そんな後評判を抜きにしても至高のミドルバラッド。秋元康が時代ごとに切り取る”選択肢”の問いは、今現在アイドルのメッセージソング以上に時代に迷い生きる人々への道標にもなり得るのではないか。

映画も曲もスマッシュヒットしたPerfumeは現行のポップスの枠をテクノロジーやスキルでさらに拡張している。それはビョークのVRとの共鳴にも通じていて、肉体的なビートやリズムが科学によって肌感を持って体験できる時代はもうすぐそこまで来ている。山下達郎竹内まりやがジャニーズ仕事の最先端として嵐を次なるステージで誘ったのはとても必然的な組み合わせである。それがまたダンディズムと哀愁を兼ね揃えた30代の嵐が演じればもう鬼に金棒。唯一シングルではなくカップリングとして選曲したのはShiggy Jr.が松井寛とタッグを組んだブラックグルーヴポップ。ドラムのキメとベースのタメが曲の持つ淡い情感をアダルトな雰囲気に仕立てている。

欅坂46は近日発売の2ndシングルと合わせてアコギのストロークがブルージーな泥臭さ=人間味を演出しており、制服で統制された少女たちの反旗を掲げるファンファーレのように世の中に轟いた。達観したトラックメイクとメロディーセンス。媚びてないことを武器にしておらず、音と言葉に色彩を加える雨のパレードが「Tokyo」という色の持て余す街を最も簡単に描いてしまったその意味。あっぱれ。銀杏BOYSはもうタイトルで決まり。メンバーの脱退が及ぼすバンドのドラマは、確かにセンチメンタルな部分を強めるはするが銀杏BOYSの音楽を殺す引き金にはならなかった。衝撃と感動を身体で聴ける。

3位はモーニング娘。16' 。鈴木香音卒業シングルとして見事コンペによって選ばれたソングライターはなんと津野米咲赤い公園)。自他共に認めるハロヲタであり、ソングライティングにおいてつんく♂をリスペクトする彼女のハロプロ愛が爆発している。デモ段階ではスカのアレンジがなされていたり、どうやら編曲でのブラッシュアップが効いてるよう。とにかく購入してから1日20回以上リピートしていて、一時期仕事に支障をきたすほどの中毒性があった....

 2位のスピッツは「ルキンフォー」や「正夢」が好きな自分にとってこれはまさに大好物。〈汚れてる野良猫にも / いつしか優しくなるユニバース〉〜野良猫と宇宙を結びつけるセンテンスがあるとするなら、それはもうスピッツの音楽の中でしか見つけられない。主人公は一歩も港から離れることなく、ただ歌っている。物語はスクロールせず、頭の中で回想するように回る。これ以上もこれ以下もない、人が夢と現実を行き来できるテリトリーの作り方を、スピッツはもう極めている。

宇多田ヒカルについて書く...ちょっとこれは自分とってまだ掴めない部類の出来事で。母親となったことが話題になり、母性が宿ったということが評価の起点として用いられているけど....それ以上に素朴さが美しいと思った。今までも宇多田ヒカルに素朴な面はあった。芸能人となり、ミリオン歌手として持て囃され追われる日々の中、彼女は経験や価値観を音楽にし、そこには確かに素朴な宇多田ヒカルも存在した。ただ、今までの素朴さは慌ただしさや忙しなさの隙間にストンと落とされたような素朴さだった。でも「花束を君に」「真夏の通り雨」では歌われ感じられる素朴さは僕らが日常で嗅ぐ匂いや景気が宿っている。咲いた花を愛で、降り出した雨は誰かの不幸かもしれないと思い込む。それらを汲み取ると母親になったことよりも、人間活動の豊かさがもたらした人としての摂理や日常にこそ、宇多田ヒカルが変化した要因があるような気がする。朝ドラやニュース番組のテーマソングに起用された事実もそうだ。人の日常のルーティンに彼女の歌が加わることに違和感がない。宇多田ヒカルが実際どんな音楽家でありたいかを問うにはまだ時期早々な気もするが(9月にアルバム出るしね)、この2曲が2016年に宇多田ヒカルが音楽シーンにカムバックするために必要不可欠な曲だったことは間違いない。