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音楽について

Fashion Music〜堂本剛のミラノコレクション参加について思うこと

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 9/21〜27の6日間、イタリアはミラノで開催されている〈Milan Fashion Week〉。

 

一般的に有名なパリコレクション、いわゆるパリコレの直前に行われるミラノコレクションは、パリコレ同様世界5大コレクション(開催順にロンドン、ニューヨーク、ミラノ、パリ、東京)の1つに数えられている。あまりファッションに関しての教養がない分、詳しい言及はしないが、そんな自分でも5大コレクションの名とその規模の大きさは把握できる。

なぜこんな説明をしているのかといえば、24日の朝、このツイートを見たことが引き金になっている。

 

 現地時間23日の夜に行われたAtsushi Nakashimaのコレクションにて、堂本剛が音楽監修を務めたというニュース。ツイッターではジャニーズファン、音楽好きを中心に拡散され、大きな話題となっていた。確かにすごい。思わず自分もつらつらと書きたいことを書いてしまうぐらいに。 

www.fashionsnap.com

 

ジャニーズという看板が大きな話題をさらに加速させていることは重々承知しているが、自分は純粋に彼が手掛けたその音楽のアプローチに興味が湧いた。

2012年に発表された『shamanippon -ラカチノトヒ』から彼はエレクトロニカの要素を本格的に導入し、それまでSly & The Family StoneやPrinceをベースにしたファンクバンドやポップスターのサウンドを、彼なりのエンタメ解釈と合わせて大きく更新させたのだ。

過去や周囲の影響を咀嚼し、アップデートすることで自身のオリジナリティを獲得することをパクリや模倣といって揶揄する傾向が日本にはある。しかし、彼の場合はジャニーズという前提からして過去をアップデートすること、それが許されてもいる存在だと受け取るべきではないか(ジャニーズは歌い継ぐ伝統がある)。「〜っぽい」などと言われ続けてきた彼が、この監修した音については間違いなく「堂本剛の音楽」を獲得している。それは素直に喜ぶべきだろう。

そして一番関心したこと。それは彼の生み出した音楽がファッションショーで使用される経緯を踏まえた上で製作された、極めて優れた空間音楽だったということ。音楽が主体となるのではなく、あくまでファッションと共にある音楽としてそこに響き渡ることを、彼はとても良く理解している。その反面、音楽の鳴らない瞬間的な無音も曲の一部として捉えている傾向は、James Blakeの香りも匂わせつつ、久石譲のメロディックな旋律にも縁を引くことができる。

 

他にもミュージシャン×ファッションを象徴するトピックは沢山ある。近しいところで言えば山口一郎サカナクション)× AOKI takamasaがパリコレにてANREALAGEの音楽監修を手掛けたことも、大きな話題となった。

 : ANREALAGE 2016 S/S COLLECTION -sound direction Ichiro Yamaguchi(サカナクション)-

フィールドレコーディングや身近なモノを使い、バイノーラル技術を用いて録音されたミニマムでクラブ志向のトラックは、音楽がファッションと、そしてショーアップされたこの状況と密接に共犯関係にあることを物語っている(※この動画もバイノーラル対応しているのでヘッドフォンなどで体験してみてほしい

 

世界に目を向けてみても音楽とファッションが1つのトレンドとして発信されることがポピュラーであるというべきトピックがある。今年サマーソニックにて来日したRadioheadのフロントマンThom Yorkeも、先日Rag & Boneのコレクションにて音楽監修を務めたばかりだ。

: Rag & Bone Spring/Summer 2017

 約10分強に及ぶサウンドはThom自身の声と限られたエフェクトが幾重にもレイヤー状に敷き詰められている。音は空気を伝わり、その振動波の大きさと長さで私たちは分別しているが、Thomの手掛けたアンビエントサウンドは服にはできない空間の装飾として、波長や波形を緻密にコントロールしている。目立たないが無ければ成立しない、自分にはそんな相互作用がこの映像からは伝わってくる。

 

奇抜な造形を特徴としているNYのストリートブランドHood by Airは去年に引き続き、ロンドンの若きトラックメイカー/プロデューサーであるArcaをNYコレクションにて起用。独創的なデザイン同様、Arcaもまた近代音楽の中で発明的なインダストリアルサウンドを創造している。

: Hood by Air | Spring Summer 2017 Full Fashion Show | Exclusive

 最近ではBjorkのアルバムプロデュースを手掛け、彼女のライブステージにおいてもオーケストラ隊を監督し、自身もラップトップにてプログラミングを行っているArca。他にもFKA twigs, Kanye Westなどにトラック提供している彼は、おそらく常に空間的な音のアウトプットを意識してクリエイティブしているのかもしれない。ビートレスで切り刻まれる小節とコードからサティのような柔らかいピアノの音色まで、人に見せられない領域を見せることで生まれるエモーショナルな瞬間を、Arcaは切り取り、ファッションというカテゴリに貼り付けている。

 

 

世界でも日本でも、いまミュージシャン・音楽家と呼ばれる人たちが他のカルチャーとメディアミックスを起こす現象が巻き起こっている。

顕著なのは映画と音楽で、RADWIMPSと『君の名。』における盛り上がりなどは社会現象と呼ぶにふさわしいトピックだろう。

realsound.jp

 

そしてやはり忘れてならないのはリオオリンピック/パラリンピック閉会式における「トーキョーショー」。 

堂本剛も敬愛する椎名林檎が監修したこの一連のショーは、音楽やダンス、テクノロジー、あらゆる要素がオリンピックの一部、東京の一部として成立している。自身を芸事を多用して表現する、そのプロデュースする能力に秀でた椎名林檎ならではの明確な4年後への布石だと思う。

 

堂本剛もまた、そんな彼女の伝統と芸能を理詰めで思考する部分を巧みに抽出して咀嚼し、自分なりにアップデートしている。ミラノコレクションの音楽も、奈良、雅楽、ファンク、骨董品、生花、古着など、彼を構成する様々な要素が年月をかけて蓄積し、堂本剛の音楽として結晶化されたにすぎない。この経験が彼にさらなるインスピレーションのアップデートを促しているだろうし、より伝統芸能に寄った、さらに堂本剛のハイブリッドミュージックをもっと聴かせて欲しいと、今はただただ熱望するばかりだ。 

 

最近気に入ったTVパフォーマンス(5+1)

noteの方ばかり更新していたのでこちらもなるべくタッチするようにしなければ。

 

音楽業界全体がライブを産業の中心に据え始めてから数年。

2016年も変わらずフェスを含めたライブ体験めがけて人々は集まり続けています。Apple Music、 Google Play Musicを主としたサブスクリプションサービス始め、CDを買うことは今改めてマイノリティーなことなのかは、もうすでに議論するようなことでもないように思います。もちろん”考えていく”話題ではありますが。

おそらく、これをアップする頃「MUSIC STATION ウルトラFES」が終わっているはずですが、今回はそんな「TVパフォーマンス」について。

日本では著作権(大方JASRACですが)の問題が大きく絡んでくるので、TV放映されたものをそのまま動画サイトにアップしてもすぐ削除されてしまいます。中には音や映像を加工して排除対象から逃れるものも数多くあります。が、それが見るに価する質かどうかは私たち視聴者によるでしょう。

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以下、貼ってあるTVパフォーマンスは海外のもので、Youtube自体にチャンネルを持ち、放送後数時間後にすぐさまアップされて世界配信されます。アーティストも日本と同じく、発売される/された新作プロモーションでオフォーする場合もあれば、それとは関係なくフェスや客演などのフックアップによってオファー要請に応える場合がある。

今回はアメリカにて放映されたTVパフォーマンスで特に胸熱なものをチョイス。それ以外もありますが、個人的にストックしておきたいものも一緒にまとめてありますので。

 

1. Ariana Grande - Side to Side with The Roots

 : from "The Tonight Show Starring Jimmy Fallon

 今年リリースされた新作『Dangerous Woman』がスマッシュヒット。ここ日本でもアリアナ人気は不動のものですが、その受け取られ方はアメリカと違い、やはりアーティストよりはアイドルとして注目されることが多い。でも、それでいいんです。アリアナ・グランデ自身の出自はそういうものだし、トレンドセッターとしてティーンの受け皿になることで他では到底届かないリスナーを獲得しているから。ザ・ルーツを従えて堂々と披露するニッキー・ミナージュとの「Side to Side」(今回ニッキーは不在)はクエスト・ラヴ(Dr.)の抑制が効いたグルーヴがアリアナのハイポップなヴォーカルと絶妙に絡む、非常にテクニカルなステージと言える。ティーンアイドルの色よりもディーヴァとして見事に羽化しつつあることを証明するこの映像。見ておいて損はない。いや、むしろ得しかない。

先日リリースされたマック・ミラーの新譜『The Divine FemineneI』でも同じく艶やかな歌声を提供しているので、こちらもぜひTVパフォーマンスを。 

3. Mac Miller - Dang! with Anderson Paak

:from "The Late Show with Stephen Colbert"

上にも書いた通り現在アリアナのボーイフレンドであるマック・ミラーも登場。今年リリースされた『Malibu』でさらにスポットライトを浴び、ソングライター/ラッパー/シンガー(さらにドラマー)として一気にスターダムを駆け上がるアンダーソン・パークを迎えた先行シングル「Dang!」をパフォーム。ブギーバックなサマーチューンとして普通に良曲なんですけど、アシッドジャズを地続きとする楽器の数々に間違いなく腰と足が反応するはず。アルバムにはアリアナ以外にもケンドリック・ラマータイ・ダラー・サインビラルロバート・グラスパーダム・ファンクなどが参加。

何か飛び抜けてヒットしたトラックがあるわけでもないが、アルバム全体のBPMも早いもので110後半ぐらいで、残りは100前後というジャズのタイム感も味わえる。若干24歳にして卓越したサンプリングセンスとプロデューススキルを合わせ持つだけに、アリアナが惚れるのもわかる気がする。

3. Bon Iver - 8 (circle)  

 : from "The Tonight Show Starring Jimmy Fallon"

間違いなくフランク・オーシャン『Blonde』と等しく、2016年を語る際にマストミュージックとなるであろうジャスティン・バーノン改めボン・イヴェールの新作『22, A Million』。宇多田ヒカルが新作を出した二日後(9/30)リリースされる今作からはすでに3曲が公式にアップされている(アルバムリリースのニュースがアップされたのちにフェスにて全曲披露されている)。そんな既発済みの3曲以外のニュートラック「8(circle)」をテレビにて初パフォーマンス。ラップトップを操り、バックにDJ、ドラムス、ギター、シンセを従え、コーラス隊にロンドンの三姉妹フォークユニット:ザ・ステイブスを招き神秘的なステージを演出している。フォークトロニカの先駆者とも言えるイヴェールにとって電子的な楽曲アプローチはなんら違和感がないが、2013年リリースされたカニエ・ウエスト『Yeezus』でアルカと同じく大きくフューチャーされた影響が、今回トラックやエフェクティブな面でダイレクトに表現されている。

同郷ウィスコンシンのバンド:コレクションズ・オブ・コロニーズ・オブ・ビーズとの混合バンド:ヴォルケーノ・クワイヤというアウトプットも持つ彼は、非常にフレキシブルである。アシッド・フォーク、アメリカン・フォークを下敷きに『Yeezus』ではダフト・パンクハドソン・モホークらと肩を並べ仕事をしている。彼の音楽は電解質な耐性を持ち合わせていて、それがヒップホップだろうがフォークだろうが見事に融解してみせる。それはおそらくアルカが突き進んだ道とはまた異なる形で今年結実することになるのが非常にドラマティックではないか。それが『22, A Dream』の本質になるだろうし、その音楽の枝はカシミーア・キャットフランシス・アンド・ザ・ライツ、チャンス・ザ・ラッパーを経てフランク・オーシャン、そしてKOHHシナプス宇多田ヒカルへ....この音楽相関図を完成させるXデーが9/30、『22, A Dream』の発売日であることを覚えておこう。これ、テストに出ます。 

4. Chance The Rapper - No Problem with Lil Wayne & 2 Chainz

:from "The Ellen DeGeneres Show"

さらにテスト範囲は続きます。チャンス・ザ・ラッパーがTVパフォーマンスを通して巻き起こした変革を告げるファンファーレがこの映像。 今年配信リリースされた『Coloring Book』は未だCDフォーマットでの発売予定はなく、 今後もその予定はないようだ。昨今のレーベルやレコード会社によるアーティストコントロールへのアンチテーゼであるこの曲。レコード会社の役員会議に乗り込むチャンスたちがハチャメチャに騒ぐ一方、途中からリル・ウェイン2チェインズが颯爽と入場しスタイリッシュにヴァースを決めるのが実にユーモラスに見える。レーベルと契約しなくても「No Problem」 (=問題ない)というテーマをTV画面の中で具現化した、非常に優れたエンターテイメントパフォーマンスだと思う。

5. CL - Lifted

:from - "The Late Late with James Corden"

何もアメリカの番組に出るのは西洋人だけじゃない。今年4月にはMac Millerと同じ”The Late Show with Stephen Colbert"にBABYMETALも出演している。いまアジア市場は世界から見ると突っつきたくなる場所なのかもしれない。インターネットやスマートフォンの登場によりジャンルが細分化された今、K-POPやJ-POPは「面白い」という概念ではなく「魅力的」に映っているのかもしれない。2NE1のメンバーであるCLは今もっとも音楽で成功を収めているアジア人かもしれない。しかもプロデュースはBIGBANGなどを手がけるTEDDY(YG)が担当。作詞はCL, TEDDYに加え、DJ Dramaのフックアップで注目されたユダヤ人ラッパー:Asher Rothも参加。ウータン・クランMethod Man」をサンプリングしたアメリカ進出を祝うこの1stシングル「Lifted」。3つのスキンカラーが掛け合わされ生まれたボーダーレスな化学反応だが、TEDDYが腰を据えて取り組んでいるだけに決してK-POPから遠く離れた地平に着地したわけではない。2015年11月にリリースされた「Hello Biitches」もTEDDYの手腕によってK-POPスクリレックスやディプロをミックスしたハイブリッドチューンとしてアップデートされている。そのスクリレックスG-DRAGON(BIGBANG)とCLをフィーチャーした「Dirty Vibe」を、ディプロはリフ・ラフOGマコ、CLを迎えて「Doctor Pepper」をそれぞれりリリースしているが、その影響は如実に結晶化されている。

「江南スタイル」をヒットさせたアメリカのマネジメントが彼女を担当しているのも、いかにこの全米進出が本気なのかが伝わってくるだろう。Spotifyのニューアーティスト枠で取り上げられるなどスタートは上々のようで、今後アルバム単位でビルボードにランクインするかも注目したいところ。

Extra. Radiohead - Present Tense

:Dir. Paul Thomas Anderson

TVパフォーマンスではないがどうしても残しておきたかったので番外編。

Daydreaming」に引き続きポール・トーマス・アンダーソンディレクションしたレディオヘッドPresent Tense」のパフォーマンスビデオ。ポールの自宅にて撮影されたこのビデオ。タイトルにもあるようにスロッピング・グリッスルなどが愛用したことでも知られるローランドのリズムボックス”CR-78”のスイッチをジョニーが押すところから始まるパフォーマンスは、焚き火の前で哀愁感漂うつかの間のひとときが収められている。肩の力も抜け、メロディーとアルペジオの余韻を味わいながら至福の時間に身を委ねるトムジョニー。そのリラックスした時間を物語るように、演奏後、CR-78を止めトムを見るジョニーの顔がなんとも愛おしい。

サマソニでも実際観て感じたが、いまレディオヘッドがバンド史上最も音楽的に解放された状態にあるという事実。各々のソロワークにおける自由度の高さが個人プレイの幅を広げ、メンバーシップにも良い影響を与えているのだろう。

2016年上半期について(邦楽/洋楽アルバム・トラック)

2016年も気づけば8月ですが...鮮度としては落ちましたが、一応公開しておきます。

以下、アルバム、トラックごと。

賛否ありますが一見さんお断りな形にはしたくないので洋楽/邦楽と分けてます。

そして当たり前ですが、あくまで”個人的主観”の選定ですので。悪しからず。

 

洋楽アルバム

01. Chance The Rapper - Coloring Book

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02. James Blake - The Colour In Anything

ザ・カラー・イン・エニシング

03. Anohni - Hopelessness

ホープレスネス

04. Beyonce - LEMONADE

05. clliping. - Wriggle

06. RadioheadA Moon Shaped Pool

07. Skepta - Konnichiwa

08. David Bowie - ★(Blackstar

09. Rihanna - ANTI

10. Aoife O'Donovan - In the Magic Hour

11. Sunflower Bean - Human Ceremony

12. PJ HarveyHope Six Demolition Project

13. Anderson .Paak - MALIBU

14. Diane Birch - N O U S

15. Knxwledge.  - HEX.9.8_ 

〜総括〜

15枚、ほぼ順不同ではあるが再生回数順に記載。やはりチャンス・ザ・ラッパーは凄まじかった。 豪華な客演は言わずもがな、自身の才能と人脈を世間の広告塔には触れさせず、ただひたすらに音楽へと投資する。これがストリーミングオンリーでレーベルを通してないことこそ、時代が添い寝すべきと選んだ男たる器量。ジェイムス・ブレイク、アノーニはそれぞれ超えるべきボーダーライン(ジェイムス・ブレイクならポストダブステップの担い手として、アノーニはアメリカという国への憎悪にも似た怒り)を超え、自身と音楽におけるアイデンティティーが一つになり、まさに才能を開花させたと言っていい2枚。ビヨンセ、リアーナはそれぞれサプライズリリースを起点に、片や妻である前に女性であること、片やスキャンダラスを過去に今現在の私がなぜ「女」であるかを自覚的に発散し、エンターテイメントのド真ん中を大手を振って歩いている。どちらもセンセーションかつタイムリーで、参加した客演陣もそれら作品の意義に賛同...というよりは共犯者になる覚悟で参加している。

変化という点で言えばレディオヘッドデヴィッド・ボウイは”変わること”を不変のスタイルとして貫き通してきた結果、新たな結晶となってまた革新を更新することになった。残念ながらボウイはアルバムリリースを見届けるかのごとく、その二日後にこの世を去ったことは、その生涯全てを一つの音楽絵巻にしてしまうかのような結末でなんとも彼らしいと思った。レディオヘッドはトムやジョニーのソロワークが見事にバンドに反映されている。直接なアプローチではなく、劇伴的なストリングアレンジやシームレスで変化自在なビート。それら全てがレディオヘッドの不変で変則で、変容こそバンドだということを証明しているかのようだ。

スケプタ、そしてこの中ではリリースが真新しいclipping.はヒップホップ作品ではあるがとにかくスキル、クオリティがバカ凄い。グライム片手にD・ダブル・E, エイサップ・ナスト,ファレル・ウィリアムズなどを迎えた今作で間違いなく去年から続く飛躍をさらに加速させていくことになるスケプタ。clipping.に関してはリミックスなども公開されたのち突如リリースされ、リリックビデオなのに全くリリックが目で追えないという一興もかましてくれた。他にもケンドリックやドレイク、カマイヤー, リル・ヨッティなどヒップホップはここ数年で間違いなくトレンドセッターの中心にある。カニエの『The Life Of Pablo』は独自性があり企画やコマーシャルも目を引いて、クオリティも申し分ないけど...単純に好みの問題ですね。

 その他、サンフラワー・ビーンは久々にファッションやアートを背負った80'sニューヨークラウドなロックバンドが出てきたことに賛辞を贈りたい。ダイアン・バーチは来日公演にてシャーデーやプリンスもカバーしていて、カバーやデュエットなどの企画盤も後々はトライしていただきたい。イーヴァ・オドノヴァンはタッカー・マーティンをプロデューサーにトニー・ファタード(バンジョー)、クリス・シーリ(マンドリン)、サラ・ジャローズなどが参加。前作以上にアメリカーナを拡張することに成功している。

とにかく話題作や名盤、音楽に縛られることなく様々なアート/カルチャーとユニゾンしていく作品が数多くあった。「〜振り」と久々にアルバムフォーマットでのリリースとなった作品もその大半が沈黙期間のハンデキャップなどを物ともせず、それどころか十分なウォームアップ期間として潜伏していたことを裏付けする結果を出している。リリース形態も多様な時代を象徴するように、それぞれが適切なフォーマットを模索し、選択し、チョイスする。自然災害、テロ、政治腐敗...イギリスはEUを離れ、アメリカはトランプという悪しきジョーカーを引く可能性を示唆している。間違いなく世界はカオスの淵に立っていて、次の瞬間に背中を押されてもおかしくないのだ。世界と日本では音楽が担う役割や権威が大きく異なり、それはここ数年で顕著になっている。だがそれぞれ興味深い発展もある。星野源KOHH、BABYMETALやSEKAI NO OWARI、あなたが好きなミュージシャンは世界の音と繋がっている。なので洋楽を聴くことが敷居の高いことと思わないでほしいし、世界の隅々で起こりうる問題を知る上で音楽も立派な情報源であるのだ。どんな音楽が自分に刺さり響いたか、僕らは2016年、また試されている。

洋楽トラック

01. The Stone Roses - Beautiful Thing

02. Radiohead - Daydreaming 

03. Justin Timberlake - Can't Stop The Feeling

〜総括〜

すいません、時間の都合上トラック単位での選定は難を極めまして...

しかし、この3曲”しか”聞いてなかったと言っても間違いじゃないくらい耳を奪われていたのは確かで。「All For One」でカムバックを成功させた後、この「Beautiful Thing」でストライクゾーンど真ん中を射抜いたローゼズ。リユニオンしたバンドの大半が過去の栄光にすがり縛られ、それを拭い去るためクリエイティビティに火を付けるも挫折する、という例をいくつも見てきた。そして、ローゼズの再結成、そして新作のレコーディング。興奮と恐怖が紙一重で押し寄せてくるこの感動(?)をローゼズで体感できる時代が来るとは思いもしなかった。その感動の波が2016年、ついに形となったわけで。武道館での単独来日公演が夢幻と消えた2016年(レニが肋骨2本を骨折)にちゃんと音源は届けてくれたこと、それが「ザ・ストーン・ローゼズの音楽」であること。ただそれだけで満足な上にこんな上質なグルーヴを放出しているんだから。「20年前のあの曲のような〜」なんてありがちなクリシェは使いたくない。無駄なものはいらない。2016年のローゼズの音楽、それだけでいい。

自分はフジロックでのアトムス・フォー・ピース、去年ホステス・クラブ・オールナイターでトム・ヨーク(DJ)と、形式の異なるトムのソロワークを実際に見ている。フィル・セルウェイのソロも、ジョニー・グリーンウッドの劇伴も、繰り返すがトムのソロワークも確実に最新作『A Moon Shaped Pool』にフィードバックされている。ストリングスとギターのディレクションは間違いなくジョニーが行ったはずだが、心に奥底にある悲壮感や絶望感のうわばみを描くのはやはりトムのヴォーカリゼーションあってこそだと思う。弦楽器も打楽器も全てがビートを構成していく。ここにはニール・ヤングスクエアプッシャーもOPNも目指せないレディオヘッド桃源郷があり、彼ら自身がその源流ともいうべき地点にたどり着いたのが最新作だ。その中でもポール・トーマス・アンダーソンディレクションを行った「Daydreaming」は映像と合わせることでさらに夢幻の世界に酔いしれることができる。句読点も起承転結もピリオドすら存在しない、ネットような世界で生きていることを快楽と取るかカオスと見るか。

日本では”男性ソロシンガー”とカテゴライズすると、どうにも波及力がなくなってしまう。平井堅秦基博三浦大知などここ日本でも男性で、ソロで才ある活動をしている人は数多く存在する。日本はイケメンや少女たちを集団でまとめ、ソロというと後天的な印象が持たれやすい。世界に目を向けてもその傾向がないわけではないが、そこには「確固たるスター性」を持ち合わせた、いわばカリスマが確かに君臨している。マイケル、そしてプリンスまでもが現世を去った。後継者は存在しない。空いた椅子は永遠に空席のまま、彼らの功績として語られる。ではジャスティン・ティンバーレイクは?ここまで読めば何が言いたいか分かるだろう。もう彼はマイケルやプリンスとは違う王座に座っている。たとえアニメのテーマソングであっても、声優として、プロデューサーとして関わっていたとしても、JTのスター性が生み出すブランド力には到底揺るぎなど生じない。アメリカで最もセクシーな男性の上位に当たり前のように名前が並ぶ彼が"Can't Stop The Feeling=感じずにはいられない"なんてフレーズを最高にファンキーなビートで言われたら...もう濡れるしかないでしょ。前置きは別として、日本にもこのファンキーなノリはトレンドとして機能していると思うので、芸人とか起用した日本版MVとか作らなくていいので、このMV丸ごと渋谷のビジョンで毎日流しておいてください 笑。

邦楽アルバム

01. BOOM BOOM SATELLTES - LAY YOUR HANDS ON ME

LAY YOUR HANDS ON ME(初回生産限定盤)(Blu-ray Disc付)

02. D.A.N.D.A.N.

D.A.N.

03. odol - YEARS

YEARS

04. indigo la End藍色ミュージック

05. AL - 心の中の色紙

06. Negiccoティー・フォー・スリー

07. Galileo GalileiSea and The Darkness

08. NakamuraEmiNIPPONNO ONNAWO UTAU BEST

09. METAFIVE - META

10. 幾何学模様/Kikagaku Moyo - House in the Tall Grass

11. 雨のパレード - New generation

12. ミツメ - A Long Day

13. 南波志帆meets sparkjoy

14. 綿めぐみ - ブラインドマン

15. 岩崎愛  - It's me

〜総括〜

再生回数の多い順で15枚、そして自分の中で"2016の上半期”を意識した上で順序を付けました。

岩崎愛はロックの既成概念に縛られないミュージシャンが多数参加しながら、ミュージシャンたちのネームバリューを出さずとも彼女の音楽的素養の輝きが十二分に味わえる。アイドルではなくシンガー、のようでコンテンポライズされるさとり世代の象徴とも受け取れそうな綿めぐみの作品は一聴してその虜に。OBKRと酒本信太による通好みなトラックメイクが綿めぐみ自身のキャラクター然とした歌声に絡むことで、東洋と西洋を掛け合わせたテイストに。既成のアイドル像が世間に浸透しているからこそ生まれた音楽アイコン。ここまでコンセプトを詰めてると逆に隙を見つけたくなる。

ミツメの4枚目は1〜3枚目で積み重ねてきたトライ&エラーを見事にアンサンブルに昇華させて見せた秀作。とにかく今はライブを見たい。雨のパレードはアルバムタイトルを背負うに値するポテンシャルが備わっているのをしっかりとアルバムに繁榮せている。驚異のバンドMETAFIVEはそれぞれの音楽的バックボーンをネットワークを駆使して緻密に、かつダイナミックに構築し、それぞれが建設的にバンド/グループとして機能することができることが可能であることを実現させた。テクニカルなサウンドコラージュ以上に音楽の刹那的な高揚感を何度も体験できる。NakamuraEmiRHYMESTERをリスペクトするなど、ヒップホップを裏地に"弾き語る"ことに新たな革新をもたらした。ライブも観たいし新曲も早く聴いてみたい。

この中で唯一アイドルグループなのがNegicco。いつかの古町どんどん(※新潟市古町を中心とした祭り)で見ていた体験が今では羨ましがられる経験として捉えられているほど、この3年余りでの飛躍は凄まじい。レキシやG.RINA坂本真綾などボーダーレスに見えて彼女たちの音楽性とシンパシーを感じられるクリエイターがチョイスされている。長澤知之小山田壮平(ex.andymori)を中心とし、藤原寛(ex.andymori) と後藤大樹(ex.andymori) を正式なバンドメンバーとして迎え、”AL”として初のバンド音源となるアルバムが『心の中の色紙』だ。弾き語りからバンドアンサンブルへブラッシュアップされた曲たちは荒々しさと豊かさを同軸上で奏でている。気鋭のソングライター二人の決して遊びではない本気がバシバシと伝わってくる。ゲスの極み乙女。が思わぬ形でスポットライトを浴びた今年。川谷絵音が本来音楽家として、そしてロックバンドとしてやりたかった本質はindigoの方にこそ注がれているような気がした。プログレッシブ・ロックという括りは煽りのようなもので、実際は生粋のメロディーメイカーとして歌謡史にも名を連ねるほどの人物だと思う。哀愁、悲哀、薄氷な愛、離別のための笑顔。マイナス70プラス30ぐらいの塩梅で人間の心の主成分を解読するバンド、2016年に他にいないですよ。

上位3枚へ。SuchmosやYogee New Wavesらと同じ年にフジロック(ルーキー・ア・ゴーゴー)に出演。それを機に調べたらBandcampに辿り着き、そのままズルズルその音の波にライドオンしていったodolの2ndアルバム。未だ20歳前半のバンドは成熟と未熟を内在させた言葉を紡ぎながら、スケールアップしようとより高い壁を飛び越えようと強く踏み切り板を蹴り込んだ。時代を歌うには日々を歌う必要があり、さらに日常の風景を、営みを、生き方を投射することも重要だ。ポップネスとインディー感を兼ね備えながら、ホールやアリーナを支配するためようなアンセムを今後生み出すことができた時、odolというバンドが今自分が想像する以上に面白いバンドになり得るんじゃないかと、もうすでにワクワクしてます。

同じく若い世代の中でも頭ひとつ、いや、むしろそういう坩堝を壊して出てきたバンドではないだろうか。洋楽エッセンスは確かに強い。アンニュイなほどブギーでディスコティック。アニマル・コレクティブやダーティー・プロジェクターで味わえる民族間を通過したグルーヴが彼らにもある。タイム感のあるセッションの要素も、クリックありきで緻密にコンダクトされたトラックもどれもこれもが卓越したスキルを物語っている。odol同様、この二組やそれこそSuchmosなども含めてフジのグリーンを埋め尽くしてくれたらそりゃ痛快だ。

 

何度も書いては消して、結果このような文になってしまった。抽象的な部分が多いことを先に謝りたいが、言葉にしようと必死だったことを少し理解しておいてほしい。

終着点が見えてからBOOM BOOM SATELLTESに感動したのか?いや、そんなことはない。いつだって感動や興奮はあった。川島道行の病気によってバンド活動が終わる。事実としてはそうかもしれないが、BBSの音楽が脳腫瘍によって遮られたバンドとは一度たりとも考えたことはないし、今後、自分の鼓動がその動きを止めるまで、そんな気持ちで彼らの音楽と向き合うことはない。雑踏を抜けた先に広がるシンプルな四つ打ちとリフレインの海。大海原への船出を告げるファンファーレ。近くにあった音が遠くへ飛ぶ。遠くにいた人が近くに来る。川島道行の歌は翼を携え、どこまでも遠くへ僕らを連れて行ってくれ、会いたい人を目の前に引き寄せてくれる。美しい。広がる可能性は人の持つ想像力を浮力に、メロディーとリズムと言葉を好きな場所に連れていってくれる。フォーマットとしてはシングルだが、彼ら自身が自負するように正真正銘、これはフルアルバムだ。たった4曲、僅か25分弱の音楽にBBSの軌跡が刻まれている。デヴィッド・ボウイの遺作となった『★』も同じく、終着点を決めた音楽家が最後に鳴らす音楽は決して「遺る」ものではなく「殘る」ものだということ。過去になろうと、音楽の持つ果てしない輝きを僕たちリスナーが目をそらさずに見つめていさえすればいいのだ。M4「NARCOSIS」の最後は川島の歌い出そうとするブレスで締めくくられる。決してこれからまた歌い出すというニュアンスでも、ドラマティックな逸話があるわけでもないだろう。このアルバムの最後は彼のブレスで終わる必要があっただけであり、それは彼らが常に音楽を駆使して自分たちに戦いを挑んでいた証でもあるのではないか。想像力を刺激し、多くの人に喜びと幸せをもたらせる。自分たちの血肉を削いででも。それは最後の最後、灯火が消え、煙が燻り終わるまで変わらない。そして消えゆく途中で灯りに導かれる人々が生まれていく。BOOM BOOM SATELLTESのラストアルバムはまた新しい火種を次の世代に灯したのではないか。そうであって欲しいし、自分もまた胸に何か熱い火種を今感じながらこれを書いていることを忘れない。

邦楽トラック

01. 宇多田ヒカル - 花束を君に / 真夏の通り雨

02. スピッツ - みなと

03. モーニング娘。16' - 泡沫サタデーナイト! 

04. 銀杏BOYZ - 生きたい

05. 雨のパレード - Tokyo

06. ストレイテナー - シーグラス

07. 欅坂46 - サイレントマジョリティー

08. Shiggy Jr. - Still Love You

09. LUCKY TAPE - MOON

09. 嵐 - 復活LOVE

11. PerfumeFlash (Cosmic Explorer Version)

12. 乃木坂46 - きっかけ

13.  林原めぐみ - 薄ら氷心中

14. CRCK/LCKS - Goodbye Girl

15. 乙女新党 - 雨と涙と乙女とたい焼き 

〜総括〜

こちらシングルは純粋にiTunesでの再生回数順。

解散してしまったのは残念でしかないが、乙女新党が残してくれた「雨と涙と〜」は各クリエイター(作詞:高橋久美子、作曲:日高央、編曲:ヤマモトショウ(ex.ふぇのたす)・rionos)の本気度が遺憾なく発揮された秀作。椎名林檎と相思相愛な関係性が見事に結実した林原めぐみのシングルは声優のカテゴリーから何百歩もはみ出したジェジーなトラックに。最近桜井和寿Mr.Children)が「良い曲」と太鼓判を押してカバーしたことがニュースにもなった乃木坂46は、そんな後評判を抜きにしても至高のミドルバラッド。秋元康が時代ごとに切り取る”選択肢”の問いは、今現在アイドルのメッセージソング以上に時代に迷い生きる人々への道標にもなり得るのではないか。

映画も曲もスマッシュヒットしたPerfumeは現行のポップスの枠をテクノロジーやスキルでさらに拡張している。それはビョークVRとの共鳴にも通じていて、肉体的なビートやリズムが科学によって肌感を持って体験できる時代はもうすぐそこまで来ている。山下達郎竹内まりやがジャニーズ仕事の最先端として嵐を次なるステージで誘ったのはとても必然的な組み合わせである。それがまたダンディズムと哀愁を兼ね揃えた30代の嵐が演じればもう鬼に金棒。唯一シングルではなくカップリングとして選曲したのはShiggy Jr.が松井寛とタッグを組んだブラックグルーヴポップ。ドラムのキメとベースのタメが曲の持つ淡い情感をアダルトな雰囲気に仕立てている。

欅坂46は近日発売の2ndシングルと合わせてアコギのストロークがブルージーな泥臭さ=人間味を演出しており、制服で統制された少女たちの反旗を掲げるファンファーレのように世の中に轟いた。達観したトラックメイクとメロディーセンス。媚びてないことを武器にしておらず、音と言葉に色彩を加える雨のパレードが「Tokyo」という色の持て余す街を最も簡単に描いてしまったその意味。あっぱれ。銀杏BOYSはもうタイトルで決まり。メンバーの脱退が及ぼすバンドのドラマは、確かにセンチメンタルな部分を強めるはするが銀杏BOYSの音楽を殺す引き金にはならなかった。衝撃と感動を身体で聴ける。

3位はモーニング娘。16' 。鈴木香音卒業シングルとして見事コンペによって選ばれたソングライターはなんと津野米咲赤い公園)。自他共に認めるハロヲタであり、ソングライティングにおいてつんく♂をリスペクトする彼女のハロプロ愛が爆発している。デモ段階ではスカのアレンジがなされていたり、どうやら編曲でのブラッシュアップが効いてるよう。とにかく購入してから1日20回以上リピートしていて、一時期仕事に支障をきたすほどの中毒性があった....

 2位のスピッツは「ルキンフォー」や「正夢」が好きな自分にとってこれはまさに大好物。〈汚れてる野良猫にも / いつしか優しくなるユニバース〉〜野良猫と宇宙を結びつけるセンテンスがあるとするなら、それはもうスピッツの音楽の中でしか見つけられない。主人公は一歩も港から離れることなく、ただ歌っている。物語はスクロールせず、頭の中で回想するように回る。これ以上もこれ以下もない、人が夢と現実を行き来できるテリトリーの作り方を、スピッツはもう極めている。

宇多田ヒカルについて書く...ちょっとこれは自分とってまだ掴めない部類の出来事で。母親となったことが話題になり、母性が宿ったということが評価の起点として用いられているけど....それ以上に素朴さが美しいと思った。今までも宇多田ヒカルに素朴な面はあった。芸能人となり、ミリオン歌手として持て囃され追われる日々の中、彼女は経験や価値観を音楽にし、そこには確かに素朴な宇多田ヒカルも存在した。ただ、今までの素朴さは慌ただしさや忙しなさの隙間にストンと落とされたような素朴さだった。でも「花束を君に」「真夏の通り雨」では歌われ感じられる素朴さは僕らが日常で嗅ぐ匂いや景気が宿っている。咲いた花を愛で、降り出した雨は誰かの不幸かもしれないと思い込む。それらを汲み取ると母親になったことよりも、人間活動の豊かさがもたらした人としての摂理や日常にこそ、宇多田ヒカルが変化した要因があるような気がする。朝ドラやニュース番組のテーマソングに起用された事実もそうだ。人の日常のルーティンに彼女の歌が加わることに違和感がない。宇多田ヒカルが実際どんな音楽家でありたいかを問うにはまだ時期早々な気もするが(9月にアルバム出るしね)、この2曲が2016年に宇多田ヒカルが音楽シーンにカムバックするために必要不可欠な曲だったことは間違いない。